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映画、書評、ジャズなど

ジェフリー・アーチャー「十二枚のだまし絵」

文学

 

十二枚のだまし絵 (新潮文庫)

十二枚のだまし絵 (新潮文庫)

 

 ジェフェリー・アーチャーの短編集です。どの作品もピリッとスパイスが効いていて、大変楽しめる短編集です。

 

「試行錯誤」は、妻とその愛人の男によって殺人の濡れ衣を着せられた夫が復讐する話。妻は夫が愛人を殺害したと偽証するが、夫は刑期を終えると、殺されたはずの愛人の男が生きていることを突き止め、射殺する。。。

 

「割り勘で安あがり」は、自分の夫と愛人を騙して、高級なネックレスの代金を半分ずつ負担させて、まんまと手に入れるという話。夫と愛人は半値に値切ったと信じているところが痛快です。

 

「ダギー・モーティマーの右腕」は、ケンブリッジ大学のボート部の部長が、卒業に当たって記憶に残る贈り物として、かつて活躍した選手の右腕のブロンズ像を探して贈った話。その贈り物は、すぐさま年配のOBによって廃棄されたのだが、その選手が実は八百長をしていたことが判明する。。。

 

バグダッドで足止め」は、イラクからアメリカに亡命した夫妻の話。アメリカで生活が落ち着き始めた頃、トルコへ仕入れに行った帰りの飛行機が、故障でバグダッド緊急着陸する。当局に見つからないかとヒヤヒヤしたものの、フランスのクルーに成りすまして、間一髪でイラクを離れ、家族の待つアメリカに辿り着く。。。

 

「海峡トンネル・ミステリー」は、友人の作家の男とその別れ際の女と一緒に食事をした話。その作家の男は、英仏海峡トンネルを舞台とする物語の構想を饒舌に語っていたが、その間、別れ際の女は無謀な食事の注文を重ね先に去っていく。残された伝票の金額を見て、男は呆然とする。。。

 

「シューシャイン・ボーイ」は、晩年にある島の総督に任じられた男の話。その島に海軍元帥が訪れると聞いて、総督は大慌てで晩餐の準備をする羽目に。使用人がいない中で島中の人々を駆り出して使用人に見せかけ、何とか晩餐を滞りなく終えることができたが、元帥は彼らが本当の使用人でなかったことをお見通しだった。。。

 

「後悔はさせない」は、フィアンセの男が間もなくエイズで死ぬことが分かっていながら保険契約を締結する男の話。見込み通り、フィアンセの男は間もなく死ぬが、騙された形の保険セールスマンは、自分がクビにならないようにと、男にも保険をかけてもらうのだが、死んだ男の健康診断での虚偽がばれて、男はショック死する。。。

 

「高速道路の殺人鬼」は、ある女性の運転する車が男の車にひたすら追われる話。女性は週末を知人の家で過ごすために車で向かっていたが、高速道路で車に追われ始める。命からがら知人の邸宅にたどり着き、男を詰問したが、実は、高速道路上で猫を轢いた際に、女性の車に殺人鬼が乗り込んでいたのだった。。

 

「非売品」は、美術を専攻する 女学生が、画廊で個展を開く話。そこに至るまでに、女はある男と情事を重ねる。。。

 

「TIMEO DANAOS」は、銀行員の男が妻とクルーズに出る話。自信家のその男は、自分は企業家だと信じ、寄港地で格安の陶器が買えるという店に騙されて妻を連れて行ってしまう。。。

 

「眼には眼を」は、殺人容疑者の弁護を請け負った3人の弁護士たちの話。うち1人の若い弁護士はパッとしないタイプの弁護士だったが、依頼人の前でいきなり義眼を取り出し、依頼人の嘘を暴く。。。

 

「焼き加減はお好みで・・・」は、通りすがりで見かけた美人の後を追って劇場の隣の席を取り、その女性と知り合いになる話。劇が終わった後の女性との関係についての展開が、レア、バーント(黒焦げ)、オーヴァーダン(焼きすぎ)、ア・ポワン(ミディアム)の4つが用意されているところがユニークな作品。

 

以上がそれぞれのあらすじですが、やはり一番の作品はラストの「焼き加減はお好みで・・・」でしょう。美人と劇場の隣の席で知り合いになった後の展開について、その女性とベッドインする展開、女性が雨でずぶぬれになって別人のようになる展開などなど、それぞれが面白いストーリーになっています。奇をてらった手法でありながら、違和感なく読者に入ってくる作品です。