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米澤穂信「Iの悲劇」

住民がいなくなった地方の集落に移住者を募る市役所職員の話です。いくつかのエピソードから成っており、最後に裏が明かされるという構成です。

主人公の万願寺は、市の甦り課で、移住者のケアやトラブル解決に奔走する。その上司の西野課長と部下の若い女性の観山は、そんな万願寺を横目に見ながら、適当に仕事をこなしている。

3人は移住者が定着するというミッションに基づいて仕事をしているわけですが、その構図が最後鮮やかにどんでん返しされることに、読者は呆気に取られることになります。

市役所の業務の細部がリアルに描かれている分、最後のどんでん返しの効果が大きくなります。

著者の筆致が本当に素晴らしく、グイグイと物語に引き込まれます。

おもしろい作品でした。