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濱嘉之「紅旗の陰謀」

 

 著者の本は初めて読んだのですが、国際情勢についてとても奥深い洞察が随所でなされ、それが壮大な結末につながっている、とても面白い作品でした。

 

主人公の片野坂彰は、警察庁のキャリアで採用され、警視庁公安部付として現場で諜報活動に当たっている。片野坂の下には4名のチームが形成されている。香川潔はかつて片野坂が新人時代の指導担当。白澤香葉子は、音楽大学を卒業後に警視庁に入り、ハッカーとしての特異な才能を見出された。望月健介は元外務省職員で、かつてシリアで激しい銃撃戦を繰り広げたという変わった経験の持ち主。こんな個性豊かな小さなチームで、世界を股にかけた壮大な犯罪摘発を行うところが、この作品の魅力です。

 

本書のモチーフは、中国共産党の世界戦略です。中国マフィアが池袋で売春を手掛けているというところから、話は中国が日本の和牛の不法な持ち出し、EU諸国(特にイタリア)への食い込み、北朝鮮戦略核のトルコへの輸出まで、壮大に展開されていき、ラストは数々の罪状での摘発につなげていきます。

 

途中、片野坂や香川の会話の中で展開される国際情勢の分析が秀逸です。本題とは必ずしも直結するものだけではありませんが、それが決して無駄なエピソードとなっていないところが、本書の魅力でもあります。こうした深いエピソードを挿入できるのは、著者が公安経験者であるからでしょう。

 

他のシリーズ作品も読んでみたいと思います。