1966年公開の『男と女』のオリジナルのスタッフとキャストによる続編映画です。オリジナルの作品を観ていなくても全然楽しめますし、とにかく人生の晩年とは何かを深く考えさせてくれる素晴らしい作品です。
スタントマンの夫を亡くしたアンヌは、レーサーのジャン・ルイと、子供が同じ寄宿舎に通っていた縁で知り合い、激しい恋に落ちた。それから何十年も時が経過し、ジャン・ルイは施設に入り晩年を過ごしている。
ジャン・ルイの息子アントワーヌは、父親が施設の同居者らと馴染めず、いつもアンヌの話ばかりしていることから、医師の勧めもあって、アンヌのもとを訪ね、ジャン・ルイに会ってくれないかと頼む。
アンヌはジャン・ルイに会いに行く。ジャン・ルイはアンヌだと気づかないが、アンヌとの過去の激しい恋愛を振り返り、饒舌に話し出す。
アンヌは、ジャン・ルイを車で思い出の地ノルマンディーまで連れ出す。
ジャン・ルイは、かつてのアンヌと目の前にいるアンヌをかわるがわる夢見て、幸せな思いに浸っているのだった。。。
人生の晩年の豊かさや希望をこんな穏やかに力強く描いた作品は、見たことがありません。
クロード・ルルーシュ監督は、インタビューで以下のような発言をされています。
「私は、人生の晩年は素晴らしいものであるべきだと考えています。現代社会は高齢者の扱いが悪すぎます。人生の終わりには、花火が打ちあがらなければなりません。」
https://www.asahi.com/articles/DA3S14330985.html
晩年の主人公が、過去の淡い恋愛の記憶に夢うつつで浸っている姿は、正に豊かな晩年の象徴と言えるでしょう。
それにしても、アンヌを演じるアヌーク・エーメの美しさに惚れ惚れします。オリジナル作品中のエーメは、とてつもなく美しいとしか言いようがありません。
今では87歳になるわけですが、とても色気たっぷりで素敵な女性です。
ジャン・ルイ演じるジャン=ルイ トランティニャンも、記憶力が衰えながらも周囲に冗談を飛ばす魅力的な老人を演じています。
この作品を観ると、人生の晩年がいかに大事な時間であるかを再認識しますし、人生でどんな破天荒な時間があっても、晩年の温かさな時間によってすべて浄化されてしまうことが分かります。
誤解を恐れずに言えば、人生とは豊かな晩年を過ごすためにある、と言っても過言でないような気がしました。
パリの市中を赤信号を無視して疾走する映像はとても美しく、主題歌も美しく、晩年を包む時間も美しく、あらゆる面で美しさを追求した作品で、これぞ映画というべき素晴らしい作品でした。