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「肉体の門」★★★★☆

 

肉体の門 [DVD]

肉体の門 [DVD]

  • 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
  • 発売日: 2015/11/11
  • メディア: DVD
 

 

正月1本目に観た作品です。五社英雄監督による1988年の作品です。かたせ梨乃の迫力ある演技が光っており、戦後の混乱期を生き抜く女たちの力強さを描いています。

終戦後の占領下で、浅田せん(かたせ梨乃)をリーダーとする娼婦のグループが結成されていた。グループの拠点は、いつ爆発するか分からない不発弾が引っ掛かったビル。メンバーは、体を売って稼いだ金の一部をプールして、いずれはビルの跡地にダンスホールを作る夢を持っていた。

ある日、伊坂新太郎(渡瀬恒彦)がビルで倒れていた。伊坂は地元の闇市を仕切るやくざ袴田と兄弟分だった。せんは伊坂をかくまう。

そんなとき、メンバーの1人町子がグループのお金を持ち逃げした。せんは、町子を激しくリンチする。町子はグループを離れ、袴田の愛人となる。メンバーの間の亀裂も深まっていく。

せんのグループとライバル関係にある娼婦のグループがあり、お澄が仕切っていた。両グループはいがみ合っていたが、次第に、せんとお澄は心が通じ合っていく。

お澄は、かつて家族が暴行された米兵への復讐を誓っていた。せんもそれを応援していた。しかし、お澄は米兵を殺し損ねて、せんのグループのビルに逃げ込んできた。ビルは警察や米兵に取り囲まれ、お澄は投降するが、米兵を刺した後、激しく銃撃されて命を落とす。

せんはビルの中で伊坂と2人。伊坂は懸命に爆弾の信管を抜こうとするが力尽きる。せんは、爆弾を支えるロープを切って爆弾を爆発させた。。。

 

 

最後、かたせ梨乃が純白のドレスで踊るシーンは、とても美しく切なく、印象的なシーンです。

 

この作品を観て思うのは、戦後の混乱の中、女性の方がプラグマティックに力強く生きていたことを強く感じます。いつ爆発するか分からない爆弾の下で、男たちはビビっているのに、せん始め女たちは、あっけらかんと生きています。散り際も堂々としています。こんな刹那的な生き方をできるのは、男よりも女のような気がします。

 

日本人は戦後のこんな混沌とした時代から、よく立ち直って、今の社会を築いたなぁ、と感心してしまいます。

 

戦後日本社会のタブーに切り込んで、「生」を生々しく描いた五社監督の魂がこもった作品でした。