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「ソイレント・グリーン」★★★★

 

 1973年のチャールストン・ヘストン主演の作品で、2022年の世界を描いたSFディストピアです。

時は2022年。人々は貧困にあえぎ、食料の供給もままならない状況で、人々はソイレント社がプランクトンから製造するソイレント・グリーンという食料の配給に頼っていた。

そんな中、ソイレント社の幹部だったサイモンソンが何者かに殺害された。その捜査に当たってのは、ソーン刑事(チャールストン・ヘストン)だった。ソーンは、ソルという老人と2人で暮らしていた。

ソーンの捜査は大きな力によってことごとく妨害される。

そして、老人ソルは、ソイレント社の隠された秘密を知ることになる。そして絶望のあまり、“ホーム”と呼ばれる安楽死施設に向かう。そこでは、クスリをうたれてリラックスした状態で、かつての美しかった自然の映像に囲まれながら、好きな音楽を聴きながら死を迎えることができる。

ソーンはソルの最期の瞬間に立ち会う。そして、そのままソルの遺体が運ばれる施設に潜入した。そこでは、なんと、ソイレント・グリーンが製造されていた。ソイレントグリーンの原料は人間だったのだ。

ソーンはその後銃撃されてけがを負う。運ばれる際、ソーンはソイレント・グリーンの闇を訴えるのだった。。。


Soylent Green - Trailer

 

 

 この作品では、富豪と暮らす若い女性が“家具”と呼ばれるなど、人間の尊厳が徹底的に否定された世界が描かれています。

人間が人間を食べるという何とも衝撃的な状況なわけですが、この作品を観て思い出すのは、かつて大きな社会問題となった肉骨粉によるBSE問題です。ある意味、牛を共食いさせることで招いた病気なわけですが、同様の事態が人間について描かれると、なおさら衝撃的です。

人口が膨張した世界においてこうしたシステムが構築されることはもちろんあり得ないと思うわけですし、映画ならではの究極的に歪んだ世界が描かれているわけですが、この作品を観ると、そうした世界が絶対にあり得ないという信念が揺らいでしまいます。それくらい、説得力を持って描かれています。

 

こうした架空の状況を説得的に表現できるというのは、正に映画の持つ最大の力であるようにも思います。

 

いろいろ考えさせられる作品でした。