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「暗殺のオペラ」★★★★☆

 

暗殺のオペラ [VHS]

暗殺のオペラ [VHS]

 

ベルナルド・ベルトルッチ監督の1970年の作品です。

東京都写真美術館でベルトリッチ監督の作品の上映が特集されており、鑑賞してきました。

ボルヘスの伝奇集の中の『裏切り者と英雄のテーマ』から着想を得て作られた作品というだけあって、キツネにつままれれたような気持ちにさせられます。

 

イタリアの田舎町タラの駅にアトスという若い男が降りた。彼の父親は反ファシズムの英雄だった。かつてムッソリーニの暗殺の計画がばれて、劇場で何者かに射殺されたのだった。アトスは、父親の元愛人のドライファに呼び出されたのだった。

アトスはドライファから、かつての父親の同士であった3人の男に会うように言われる。また、彼らに敵意を抱いていた地主にも会う。その地主は父の殺害を否定する。

アトスは、何者かがアトスを町から追い出そうとしている気配を感じる。そうした中、アトスは、実は父親の同士であった3人こそが父親の殺害犯であることを知る。実は、ムッソリーニの暗殺計画を漏えいしたのが、アトスの父親だった。

そのことを咎められた父親は、3人の同士に対して、自分を殺害して、反ファシズムの英雄とすることを求めたのだった。。。


映画「暗殺のオペラ デジタル・リマスター版」 予告篇

 

ラストのシーンは、アトスがタラの街を去ろうとして駅に滞在するシーンなのですが、実はそこに町がなかったかのような示唆を与える不思議なエンディングとなっています。

オペラの曲が大変効果的に使われていて、非日常的で幻想的な作品の雰囲気を効果的に醸し出しています。

ファシズムの英雄が実は全く逆であったというエンディングは圧巻としか言いようがありません。作品を通して、街の人たちのアトスに対する態度がどことなくぎこちないわけですが、その意味が最後に明らかになっていくという展開は、極めて巧妙です。

アトスの父親の元愛人を演じているアリダ・ヴァリは、かつて『第三の男』にも出演されていますが、年を重ねたアリダ・ヴァリもとても魅力的で、この作品で欠かせない存在となっています。

 

それにしても、ベルトリッチ監督がこの作品を29歳の時に制作したというのは、驚愕です。