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「ウディ・アレンのバナナ」★★★☆

 

ウディ・アレン監督の初期の作品です。最近の洗練された作品に比べると、かなり粗削りで、勢いで作っているような印象を受けますが、それでも、ウディ・アレン独特のパンチの効いたコメディ・センスは既に開花していることが分かります。

 

企業の商品検査員のフィールディング(ウディ・アレン)は、自宅に署名集めに訪れた反戦運動家ナンシーに一目惚れし、2人は付き合うことに。フィールディングは彼女の気を引くために、熱心に反戦運動に加わるが、やがて、ナンシーは、フィールディングにリーダーシップがないことを理由に別れを告げる。

 

傷心のフィールディングは、単身で南米の独裁国家サンマルコに渡るのだが、そのまま革命軍に加わり、羨望の的となる。そして、いつの間にか大統領に仕立てられてしまう。その後、資金集めに米国に戻ってくるのだが、ナンシーはそれがフィールディングと知らずに、アプローチしてきたのだった。。。

 

 

トーリーは、あまりにくだらないのですが、冴えない主人公が反戦運動家の女性の気を引くために不器用ながらも一生懸命に口説いている姿に、どこか共感を覚えてしまいます。

ウディ・アレン監督のコメディ・センスは、この頃から今に至るまで引き継がれてきたといえますが、やはり作品としてたの洗練さは、当時に比べると、最近の作品の方が格段に上だと思います。

 

ところで、この作品におけるウディ・アレンの演技を見ていると、チャップリンサイレント映画を彷彿とさせます。極端な話、仮にセリフがなかったとしても、意味が伝わってきます。それだけ、ウディ・アレンは、俳優としても高い表現力の持ち主なのだと思います。

 

ウディ・アレンのセンスがぴたりとはまる人には、大変楽しめる作品です。