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大沢在昌「新宿鮫」

 

新宿鮫?新宿鮫1 新装版? (光文社文庫)

新宿鮫?新宿鮫1 新装版? (光文社文庫)

 

 

日本のハードボイルド・ミステリーの代表作家である大沢在昌氏の作品を、今更ながら初めて手に取りました。1990年の作品ですが、今読んでも全く色あせておらず、完成度の高い作品です。

 

主人公の鮫島は新宿署に勤務する警察官であるが、その経歴は異色で、もともとはキャリア官僚だったものの、ある公安関係事件に巻き込まれて、新宿署預かりの形で、防犯課に籍を置いている。鮫島は正義感に燃えながら、孤立無援で犯罪捜査に当たっている。一回り以上年下の昌というロックシンガーの女性を彼女に持つ。

 

新宿署の警察官が次々に射殺されていく。殺害に使われたのは、出所したばかりの木津という男が改造した銃だった。鮫島は木津の行方を追う。木津はゲイだったことから、鮫島は木津の出入りするゲイの店を張り込む。

鮫島はついに木津のアジトを突き止め、単身で乗り込んだものの、木津に返り討ちに会うが、鮫島の防犯課の上司が間一髪駆けつけ、木津を射殺する。

警官殺しの犯人は、木津の銃を持ち出したゲイの友人カズオと思われたが、カズオが一時泊まっていた知人の砂上だった。砂上は自分が新宿のライブ会場に向かう途中、チンピラに殴られたのだが、警察官は彼を助けに来てくれなかったため、警察官に恨みを持つことになったのだ。鮫島はちょうどその場面に立ち会っていたのだった。

鮫島は、砂上が次に鮫島の彼女の昌のライブ会場に犯行に向かうつもりであることに気づいた。昌が標的になっていたのだ。鮫島は昌のライブ会場に駆けつけ、間一髪、間に合った。。。

 

 

この作品の素晴らしいところは、一人一人のキャラクターが立っているところです。元キャリア官僚のはみだしである鮫島のキャラクターもさることながら、その上司の防犯課長の桃井は、家族を交通事故でなくして、性格が変わってしまったものの、孤軍奮闘する鮫島の唯一の理解者であり、鮫島を危機一髪で救出します。

鮫島の彼女であるロックシンガーの昌も、普段は強がっている性格で、鮫島に毒を吐きながらも、随所で女性らしさを垣間見るところが魅力的です。

 ゲイで銃の改造に執着する木津のキャラクターも独創的です。

こうしたプレイヤーたちのキャラクターの魅力が、本作品の魅力を高めているように思います。

 

新宿鮫シリーズはその後、著者の鉄板となるわけですが、こうしたキャラクター設定の巧妙さによるところが大きいと思います。