成瀬己喜男監督による1951年の作品です。
倦怠期を迎えた夫婦を描いた作品です。
初之輔(上原謙)と三千代(原節子)の夫婦は大阪で暮らし、初之輔はサラリーマンとして働き、三千代は家事に専念していた。三千代は、そんな代わり映えのしない生活に不満を持つようになり、夫婦関係はぎこちないものになっていく。
そんな中、初之輔の姪の里子が家出をして東京からやってくる。里子と初之輔の仲睦まじさが、夫婦の亀裂を結果的にさらに広げてしまう。
三千代は東京に帰り、実家に滞在する。当分は帰れないつもりで、仕事を見つけるつもりだったが、心配した初之輔が出張を口実に東京までやってくる。
2人は再び一緒に大阪に帰っていく。。。
最後、2人で列車に乗っているときに、三千代が心の中でつぶやく以下のセリフが印象的です。
「私のそばに夫がいる。目をつぶっている。平凡なその横顔。生活の川に泳ぎ疲れて、漂って、しかもなお闘って、泳ぎ続けている1人の男。その男のそばに寄り添って、その男と一緒に、幸福を求めながら生きていくこと。そのことは、私の本当の幸福なのかもしれない。幸福とは、女の幸福とは、そんなものではないのだろうか。」
今となってはとても古びた考え方としか思えませんが、戦後間もない時期は、こんな感じだったのでしょう。男が外で働き、それを女が家で支えたことで、日本社会は高度成長を達成できたという面もあったように思います。
他方、この作品には、戦争の爪痕がほとんど出てきません。作品全体の重みがどこか欠けてしまっている印象は、戦争の爪痕の不在によるもののような気がします。