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映画、書評、ジャズなど

「カルメン故郷に帰る」★★★★★

 

木下惠介生誕100年 「カルメン故郷に帰る」 [DVD]

木下惠介生誕100年 「カルメン故郷に帰る」 [DVD]

 

 木下恵介監督による1951年の作品です。国産初のカラー映画ということで、浅間山をバックにした風景が鮮やかに描かれています。

 

浅間山の麓の村に、おきんことリリー・カルメン高峰秀子)が故郷に錦を飾るために友人のマヤ朱美を連れて戻ってきた。おきんは田舎を飛び出して東京で“芸術”をやっていると自負していたが、実はストリッパーをやって人気を博していたのだった。

当初は、東京での芸術ということで校長先生を含めてカルメンの帰省を歓迎していたのだったが、実はストリッパーだったことが判明し、その派手で露出の高い服装もあって、カルメン父親は恥ずかしさのあまり寝込んでしまう。

そんな中、小学校の運動会があり、カルメンらも観に行った。そこで、カルメンがかつて恋をしていた田口先生が自ら作曲した曲を演奏する場面があった。田口先生は戦争で失明してしまい、オルガンだけが唯一の楽しみだったのが、借金のかたとして、金貸しもする興行主の丸十の親父に奪われてしまっていた。そんな田口先生の見せ場を校長先生が用意したにもかかわらず、カルメンらはそれを台無しにしてしまい、校長先生はカンカンに怒ってしまう。

カルメンらは名誉挽回とばかりに、村で踊ることを決意。興行主の丸十と共に急遽踊りの興行を企画。校長先生は興行を中止させようとしたが、興行をやらせてやりたいという父親の頼みもあって、結局興行は予定通り行われた。

興行の日、父親らは校長先生の自宅に泊めてもらい、カルメンらが東京に戻るとき、父親や校長先生らのお見送りはなかった。

しかし、カルメンの興行が成功したおかげで、丸十の親父は田口先生にオルガンを返却し、カルメン父親に渡した興行収入は、校長先生に委ねられ、その一部は田口先生の借金の返済に充てられることになった。。。


『カルメン故郷に帰る』デジタルリマスター 予告篇 directed by 本木克英

 

戦後間もない頃の日本の田舎の様子が手に取るように感じられる作品です。急速に国際化が進む東京で活動するカルメンと、それをすんなり受け入れられない田舎の人々との葛藤が上手く表現されています。カルメンの興行も身内からは大反対にあったものの、一般の人々からは受け入れられ、カルメンの興行のおかげで、田口先生にオルガンが戻ったり、いいこともあったりしたところに少しホッとさせられます。

 

他方、この作品は占領期に制作された映画なので、ところどころGHQの配慮を感じる場面もあります。カルメンらの興行を止めようとした校長先生に対し、カルメン父親が、表現の自由を持ち出して決行を説得する場面は、表現の自由の大切さを日本人に教えたいGHQへの配慮のようにも感じます。運動会の場面も、かつての軍隊的な行進とかの場面はなく、フォークダンス的な踊りが前面に出ていたりして、この辺もGHQテイストに作られているように見えます。

 

主演の高峰秀子も素晴らしいのですが、校長先生を演じる笠智衆がいい味を出しています。

挿入歌♪そばの花咲くが印象的で、作品中でも田口先生が作曲した曲として効果的に使われています。


映画・カルメン故郷に帰る主題曲「そばの花咲く 木下忠司作詞・作曲」

 

戦後間もない時期にここまでレベルの高い作品が撮られていたことに驚きを感じます。これはある意味、戦前の日本映画のレベルの高さを表しているように思います。戦前の日本映画の多くは戦争で焼かれてしまいましたが、残っていれば大変素晴らしい作品もいっぱいあったのではないかと思います。

 

日本映画を堂々と代表する作品の一つといえる作品です。