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「シン・ゴジラ」★★★★☆


『シン・ゴジラ』予告

これまでのようなゴジラ映画を楽しみに観に行った方にとっては、もしかすると肩透かしだったのかもしれませんが、予想外に面白い映画でした。要は、怪獣映画ではなく、官邸の視点で危機管理を描いたような作品で、しかも、実際の政府の対応と比較しても、かなりリアリティがあります。

 

東京湾でトンネルの崩落事故が起こり、官邸にも一報がもたらされる。原因は不明であるが、内閣官房副長官の矢口(長谷川博己)だけは、未知の生物の可能性を示唆する。実際にそれは未知の生物であることが判明。すさまじい破壊力で東京の市街を破壊していく。これまでにない災害であり、政府の対応は後手に回る。政府は初の防衛出動命令を発するが、いざ攻撃の段階になると、逃げ遅れた人々の存在を理由に、攻撃をためらう。

その生物はようやく海に戻り、名称をゴジラとされる。しかし、さらに困った問題は、東京では放射線が確認されたことだ。ゴジラ放射性物質をエネルギーにしている可能性が高まる。

ゴジラは再び鎌倉に上陸。政府は、自衛隊による攻撃に踏み切る。ゴジラの動きはいったんは収まったが、またすぐに動き出す可能性が高い。

そんな中、米国が協力へを申し出、日系アメリカ人の特使(石原さとみ)を派遣してくる。それはかなり強引なもので、国連安保理決議を使って、無理やりゴジラに核爆弾を落とそうというものであった。

矢口はその計画を実行させないよう、日本独自でゴジラを冷却する計画を実行に移すよう、必死に作業を進める。

結果的に、ゴジラは矢口らのプロジェクトによって、その活動を止められることになる。その裏には、官邸の必死の外交交渉があった。こうして、日本は、核爆弾の投下を免れることができたのだった。。。

 

 

この作品では、ゴジラの人間味のような要素は全くなく、あくまで放射性物質で動く無機質な生物として描かれています。つまり、ゴジラのキャラクターを完全に殺して描くことによって、政府・官邸の危機管理対応のみにスポットを当てた映画に仕立て上げたと言えます。

 

個人的には、この試みはかなり成功していたように思います。官邸や自衛隊の対応についても、あまり違和感はありませんでした。むしろよく取材した上で作られていたように思います。

 

怪獣映画を期待していた子供たちには少々酷かもしれませんが、大人はきちんと楽しめる作品でした。