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「エリート・スクワッド」★★★★☆

 

エリート・スクワッド [DVD]

エリート・スクワッド [DVD]

 

2008年のブラジル映画です。ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作品で、ブラジルでは相当な反響を呼んだ作品のようです。警察の腐敗とスラムでの麻薬の蔓延がテーマの作品ですので、ブラジル国民にとってはリアリティ溢れる作品だったのかもしれません。

 
映画の舞台は、ブラジル警察の特殊部隊BOPE(ボッピ)。麻薬犯罪者を容赦なく殺害し、ギャングにも恐れられている部隊だ。その隊長を務めていたのがナシメントだった。
新人警官たちの中にはBOPEを志願する者もいたが、過酷な訓練でその多くが脱落していった。そんな中、ネトとマチアスの二人の青年は訓練を経てBOPEに入隊する。ナシメントは犯人を殺害する日々にうんざりし、ちょうど子供が産まれたタイミングもあり、BOPEから手を引くことを考え始めていて、ネトかマチアスのいずれかを後継者にしようと考えていた。
  
そんな中、ブラジルに教皇が訪問することになり、しかもスラム街に滞在するということで、スラム街の掃討作戦が始まり、BOPEとギャングの激闘が開始される。マチアスは大学にも通っていたが、そこでスラムを拠点とするNGOにも関係を持つが、NGOに参加する金持ちたちが麻薬に手を染めていることに憤りを感じる。やがてマチアスがBOPEの一員であることが仲間にばれてしまう。
そんなNGOが支援する少年の中に目が悪い少年がおり、マチアスは眼鏡を作ってあげた。しかし、その受け渡しをネトに依頼したところ、マチアスの殺害しようとした男が誤ってネトを殺してしまう。
 BOPEとギャングは壮絶な死闘を繰り広げる。それはギャングと癒着する警官との戦いでもあった。壮絶な拷問の末、ようやくボスの居場所を突き止め、最後はマチアスがとどめの弾を撃ち込んだ。。。
 
 
犯罪者たちが当たり前のように銃を所持しており、警官も身を守るために銃を撃ちまくり、抗争が激化するという悪循環の構図が見て取れます。そんな状況を達観して冷めた目で見ている主人公ナシメントの淡々としたナレーションが、映画の雰囲気を効果的に醸成しています。
 
決してエンターテイメント風な作品ではないにもかかわらずブラジルで大きな支持を集めたということは、それだけリアリティに富んだ内容だということなのでしょう。人の命が軽視されたブラジル社会が浮かび上がってきます。
 
この作品の魅力の一つは、 弁護士を目指して学校に通うまじめな黒人青年のマチアスのキャラクターでしょう。貧しい育ちで、社会学を学び、自分と同じ境遇の少年たちを助ける優しい青年ですが、富裕層の若者がNGOの名を騙って麻薬に手を出している現実に憤りを感じます。
 
最後まで飽きさせない作品でした。