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「マネー・ショート」★★★☆


The Big Short | Trailer | Paramount Pictures UK

マイケル・ルイスの『世紀の空売り』(原題“Big Short”)を原作とする映画です。

概ね原作をなぞった仕上がりとなっているので、ストーリーは過去の原作の記事を参照してください。

さて、映画の中身ですが、リーマンショックの中で、住宅ローン担保証券(MBS)市場の崩壊にかけて大量のCDS(Credit Default Swap)を買い込んでいた人々が描かれています。CDSは保険の一種ですから、MBSが不履行になった際に、CDSを持っていればその損失が補填されます。しかも、CDSは、実際にMBSを持っている人でなくても保有することができるのです。当時、大手投資銀行は、誰もMBSの崩壊を考えもしなかったので、CDSを大量の売ってしまったのです。

 

原作本も映画もそうですが、こうして大金を手にした人たちが必ずしも充実感を感じていない点にフォーカスされています。CDSで儲けるということは、市場の崩壊を見越してお金を手にするということ、言ってみれば、人の不幸に乗じて儲けるということです。

そして、こうした混乱の中ですら、銀行幹部たちはしっかりと利益を懐に入れていた点も強調されています。

 

こうした着眼点は極めて重要だと思うものの、映画ではもう少し違った描き方ができたのではないか、という気はします。いろいろな登場人物が次から次へと目まぐるしく登場するのですが、その一人一人の個性やキャラクターをもう少ししっかり描いても良かったのではないか思いますし、それこそ映画でしか表現できない部分だと思うのです。この内容だったら、原作本を読んだ方がましです。

 

それにしても、邦題の「マネー・ショート」というタイトルの付け方はいかがなものかと思います。「ショート」は“空売り”を意味するにもかかわらず、「マネー・ショート」だと、“資金が底をつく”みたいない意味になってしまい、原作の意味とは異なった意味になってしまいます。あまりに雑なタイトルの付け方だと思います。