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「黒いチューリップ」★★★★☆

黒いチューリップ HDマスター版 [DVD]

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 アラン・ドロン主演の作品で、フランス革命前夜のフランスにおける貴族と民衆の対立を描いた作品です。個人的にはかなりツボにはまった作品でした。

 この時期のフランスでは、貴族に対する民衆の反感が高まっていた。そんな中、財宝を持って逃亡する貴族たちから財宝を強奪する「黒いチューリップ」と呼ばれた盗賊が出没し、民衆の支持を得ていた。

 「黒いチューリップ」の正体ではないかと言われていたのが、貴族のギョーム(アラン・ドロン)だった。貴族たちは「黒いチューリップ」を捕らえようと必死になった。あるとき、憲兵隊長は「黒いチューリップ」と対峙して、その顔に傷を付けることに成功。ギョームは貴族たちの会合に参加するにも、顔の傷で正体がばれることを恐れた。そこで、自分と瓜二つの弟ジュリアンを呼び寄せ、兄ギョームを演じさせた。

 ジュリアンは兄ギョームの崇高な精神に感銘を受け、兄になり替わることを快く引き受けた。ギョームとして会合に向かう途中、ジュリアンは馬を操るのに手こずっていたところ、結婚式を挙げていたカロリーヌと偶然出会う。

 ジュリアンはその会合の場で、パリの民衆たちを抑圧するために、グラジアック指揮官が連隊を率いてパリに進攻する話を聞く。その話を兄ギョームに相談するが、兄ギョームは取り合おうとしない。兄に幻滅したジュリアンは、カロリーヌとその父親たちと手を組んで、パリに向かう橋を爆破し、グラジアックの進攻を止めることを企てる。

 ギョームたちは、グラジアックの偽の指令書をでっちあげ、軍隊をパリから退却させることに成功。その後、憲兵隊と対決するが、ジュリアンは捕らえられてしまう。兄のギョームは監獄に向かい、ジュリアンを救い出すが、怪我を負い、捕らえられる。

 ギョームは貴族たちが見物する中、広場で絞首刑に処せられ、貴族たちは喝采する。

 「黒いチューリップ」が無事処刑されたことで喜びに沸く貴族たちだったが、ジュリアンが姿を現し、貴族たちは狼狽する。ジュリアンに促されて広場を見に行った貴族たちは、広場で貴族のボスが絞首刑に処せられているのを目にする。

 最後、ジュリアンは自分がギョームでないことカロリーヌに打ち明け、2人は結ばれる。。。


 フランス革命を題材に、コメディタッチに作られた作品で、エンターテイメントの要素もふんだんに盛り込まれていて、映画作品としては大変良くできていると思います。

 コメディタッチでありながらも、フランス革命の本質的な部分は盛り込まれていて、当時の社会の雰囲気も何となく伝わってきます。

 この作品を見ると、当時のフランスにおいて、貴族と民衆の間には、同じ国民という意識が芽生えていなかったことがよく分かります。貴族たちは民衆を押さえつけるために、平気で外国から軍隊を派遣させたりするわけで、今では当たり前の国民国家という概念が当時存在していなかったことを、改めて認識させられました。

 そして、広場での絞首刑を貴族たちが楽しんでいるシーンを見ると、西洋文明もかつては大変野蛮さに溢れていたことも認識させられます。絞首刑は人々の娯楽でもあったわけです。

 そして、アラン・ドロンの独特の色気も、本作品の魅力であることは間違いありません。

 一言で大変面白い作品でした。