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映画、書評、ジャズなど

「こうのとり、たちずさんで」★★★★

映画

こうのとり、たちずさんで [DVD]

こうのとり、たちずさんで [DVD]

 ギリシアの国境地帯の難民居住区を舞台に取材を進めるテレビレポーターの話です。静かに淡々と進んでいく雰囲気が、リアリティを高めています。

 テレビレポーターのアレクサンドロスは、ギリシア国境地帯で取材を行う中で、一人の政治家の失踪事件に興味を抱く。そのかつての妻(ジャンヌ・モロー)に取材協力を求め、一旦は断られるが、その後、アレクサンドロスのもとを訪れ、録音テープを手渡す。

 アレクサンドロスは、アルバニア人のじゃがいも売りの男が失踪した政治家ではないかと思い始め、かつての妻と国境で対面させたが、妻は、人違いだと言われる。

 一方、アレクサンドロスは、バーで彼を見つめる少女と一夜を明かすことに。実はその少女は、彼が追っていた男の娘だった。その少女は同じアルバニア人と結婚式を挙げる。国境の川を挟んでの結婚式だったが、遠くで銃声が聞こえると、参加者は散り散りになった。追っていた男の行方も再び分からなくなる。。。

 最後は、ずらりと並ぶ電柱の上に工事の人たちが静かに上っている前をアレクサンドロスがとぼとぼと歩いているシーンで終わります。その姿はあたかも飛び立つこうのとりを象徴しているようです。このラストシーンの残像は、鑑賞後もしばらく脳裏に残り続け、名シーンと言えるでしょう。

 タイトルのこうのとりを彷彿とさせるシーンは、冒頭でも見られます。アレクサンドロスを国境線まで案内した軍人は、国境線をまたごうとして片足を上げた状態で静止します。その光景はあたかもこうのとりがたちすくむかのようです。

 このように、この作品中でこうのとりは、ギリシア国境地帯の何ともやるせない雰囲気を効果的に象徴しているわけです。

 作品自体は淡々と静かに進んでいくので、途中やや退屈感を感じないわけではありませんが、ただ、こうしたギリシア国境地帯の問題というのを世の中に明らかにしていこうという監督の意気込みは大変伝わってきますし、そうした強いメッセージを発信できるのは、映画が持つ最大の効用の一つではないかと思います。