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「ギリシャに消えた嘘」★★★★

 アテネでツアーガイドをしているライダルは、アテネに旅行で来たチェスター・マクファーランドとコレットの夫妻に出会う。ライダルはちょうど父親を亡くしたばかりで、葬儀にも出られずにいたが、チェスターは亡くなった父親にそっくりだった。

 ライダルは夫妻のガイドを務めたが、帰りがけに、コレットがお土産で買ったブレスレットを忘れていったため、それを届けるために夫妻が泊まるホテルに向かう。

 ところが、ライダルはそこでチェスターが一人の探偵を殺害する場面で出くわしてしまう。チェスターは投資詐欺を働いていたため、その筋の関係者から雇われた探偵に後を着けられていた。そして、その探偵がピストルを出したため、誤って殺害してしまったのだった。

 3人はホテルを抜けてクレタ島へ逃亡を謀る。そこでライダルの知人から偽造パスポートを受け取る段取りになっていた。コレットは夫が殺人を犯したことは知らなかった。コレットはライダルに思いを寄せていたため、チェスターは激しい嫉妬の思いにかられた。途中雨宿りで立ち寄ったクノッソス遺跡の地下で、チェスターはライダルを殺害しようと激しく殴打する。そして動揺するコレットをなだめようとしたところ、コレットを誤って階段から転落させてしまい、殺害してしまった。

 チェスターは一人でクレタ島に船で渡るが、意識を取り戻したライダルも後を追った。2人はもはや同じ穴の狢で、自首できない状況に追い込まれていた。

 2人はクレタ島でパスポートを受け取り、フランクフルトに飛ぶために空港に着く。しかし、チェスターはライダルを裏切って、一人イスタンブールに飛ぶ。チェスターはそれに気づき、自首した上で、捜査関係者と共にイスタンブールに向かった。

 ライダルはチェスターの居場所を突き止め、レストランに誘い出し、チェスターに自白させようとするが、チェスターは逃亡を謀る。そして、追いつめられ、背後から射殺された。ライダルは、引き取り手のないチェスターの葬儀を見届けた。。。


 アテネパルテノン神殿からクノッソス遺跡、クレタ島、そしてイスタンブールグランバザールと、とにかく映像は楽しめます。特にイスタンブールグランバザールで繰り広げられるチェースのシーンは圧巻です。

 3人の微妙な関係も本作品のストーリーの軸を成しています。チェスターとコレットの夫婦の関係は、そこにライダルの存在とチェスターの行動への不信感という要素が入り交じることによって、夫婦関係には亀裂が走っていきます。

 そして、チェスターがライダルの父親に似ているということが、本作品にとって欠かせない要素になっています。ライダルはチェスターの犯罪に巻き込まれ、その後も散々裏切られ続けるわけですが、どこか同情を抱いてしまい、最後ライダルが死んだとき、葬儀を見届けるわけです。

 このストーリーの設定は決して悪くないのですが、ただ欲を言えば、ライダルがチェスターに同情を寄せてしまう背景として、ただ父親に似ているというだけでなく、もう一ひねり欲しかったという気がします。私はパトリシア・ハイスミスの『殺意の迷宮』を読んでいないので、原作がどうなっているかは分からないのですが、映画だけ見れば、もう一ひねりあれば、説得力が増したような気がします。

殺意の迷宮 (創元推理文庫)

殺意の迷宮 (創元推理文庫)

 それなりには期待に応えていた作品でした。