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映画、書評、ジャズなど

「カイロの紫のバラ」★★★★★

 ウディ・アレン監督の素晴らしいユーモアとファンタジーのセンスが、最も素晴らしい形で反映された作品で、最高のラブ・コメディ作品の一つだと思います。

 平凡なウエイトレスのセシリアは、乱暴で働かない夫に愛想を尽かしている。そんなとき、ちょうど映画館で上映されていた映画「カイロの紫のバラ」を一人で繰り返し鑑賞する。すると、作品に端役で登場するトム・バクスターがそんなセシリアに気付き、スクリーンからセシリアに声をかけ、スクリーンから飛び出してきてしまう。トムとセシリアは現実の世界の中でロマンスを繰り広げるが、スクリーンの中ではトムが抜け出したことで、作品の進行がストップしてしまい、共演者たちは不満たらたら。

 危機感を覚えた映画配給会社は、トムをスクリーンに連れ戻そうと血眼になって捜索する。さらに、トム・バクスターを演じていた俳優ギル・シェパードも、自分の名声に関わるということで、スクリーンから抜け出した自分を探す。そんな中、ギルは偶然セシリアと出くわす。セシリアはトムとギルの2人から言い寄られ、2人の間で心が揺れ動くが、現実の世界のギルを選ぶ。

 トムはスクリーンに戻り、セシリアはギルと共に旅立とうとするが、問題が解決したギルは、一人ハリウッドに戻っていく。

 残されたセシリアは、映画館で次の作品を一人鑑賞していた。。。


 淀川長治氏によれば、「カイロの紫」には、安っぽいサイレントの二流映画という意味があるのだそうです。そして、かつて『キートンの探偵学入門』というサイレントの作品でバスター・キートンの映画館の映写技師が映写中に眠ってしまって、夢を見て分身が歩き出し、上映中の画面の中に入り込んでしまうという設定があったそうです。ウディ・アレン監督は、この逆を行った作品ということで、淀川氏は、

ウッディ・アレンの映画マジック。映画芸術。」

と絶賛しています。


 このファンタジーの設定も素晴らしいですが、さらに、冴えないウェイトレスが映画スターとロマンスを繰り広げ、さらには現実とスクリーンの中の2人の俳優から言い寄られるという展開が、何ともユーモアに富み、ほんわかとした温かい気持ちにさせてくれます。

 冒頭とラストに流れる♪Cheek to Cheekが作品の雰囲気にとても似合っています。Fred Astaireが歌っています。 何度見ても飽きない素晴らしい作品です。