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「ギター弾きの恋」★★★☆

 ウディ・アレン監督による1999年の作品です。ジャンゴ・ラインハルトをこよなく尊敬する架空のジャズ・ギターリスト、エメット・レイについて描いた作品です。

 エメット(ショーン・ペン)はギターの腕前には自信があり、自分はジャンゴ・ラインハルトの次に凄いギターリストだと思っている。他方、生活態度は悪く、ライブをしょっちゅうすっぽかしていた。

 あるとき、ライブ演奏に行った先の休暇日に、ビーチで声をかけて知り合ったハッティという女性を親密になる。ハッティは口がきけない女性で、当初はエメットは声をかけたことを後悔していたが、ハッティの純粋さに次第に惹かれていく。

 ハッティはエメットに同行して生活するようになる。しかし、ハッティはある日家を出て行き、エメットはブランチというゴージャスな女性と知り合い、結婚することに。ブランチは案の定、他の男と浮気をしていた。

 エメットはハッティに会いに行くが、ハッティは既に新しい生活を歩み始めていた。

 エメットは苦しみ、ギターを破壊する。その後エメットがどうなったかは誰も知らない。。。

 架空の人物ではあるのですが、エメットを知る人物たちが彼について語る場面が所々に登場し、あたかも実在の人物であるかのような感覚にさせられます。彼について語る人物の中には、ウディ・アレン本人のほか、ジャズ評論もしている作家ナット・ヘントフも混ざっています。皆それぞれがしたり顔でエメットを振り返っているところは、ウディ・アレン監督らしさが出た作品と言えます。

 ちなみに、この作品の原題は“Sweet And Lowdown”です。このタイトルはもちろん、ガーシュインの曲から取られたものです。 ウディ・アレン監督のインタビューによれば、当初、ウディ・アレン監督は“Sweet And Hot”というタイトルを考えたようですが、“Sweet And Lowdown”の方がいいということで、このタイトルに決まったとのこと。

PRAIRIE MILLER: Let's talk about this title first, Sweet And Lowdown. Is that from a song?

WOODY ALLEN: Yes, it's an old George Gershwin song. And there were certain phrases that I was trying to get for this picture. The first one I thought of was Sweet And Hot, which is a jazz phrase, and one that I felt matched the characters. But I felt Sweet And Lowdown was even better. You know, that she was sweet, and he was lowdown!

http://www.woodyallen.art.pl/eng/wywiad_eng_11.php

 ハッティがSweetで、エメットがLowdown。そう考えると、原題のままの方が良かったようにも思えてきます。

 ジャズの曲がふんだんに使われていたのは良かったのですが、できれば実在の人物をベースにした作品だったらなお良かったのになぁ、と思ってしまいました。