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映画、書評、ジャズなど

アガサ・クリスティ「オリエント急行の殺人」

 

 

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 

久々に読み返してみましたが、事件の解決に向けたポアロの思考の積み重ねが実によくできていることを改めて実感しました。

 

私立探偵エルキュール・ポアロは、急遽予定を変更してオリエント急行に乗り込んだが、列車はいつもと違って様々な国籍の人々で満員だった。列車は途中、雪で立ち往生するのだが、そこで殺人事件が発生。事件発生後に列車の外に出た人物はいないと思われることから、列車の乗客の中に犯人がいることは間違いなかった。

ポアロは事件の解決を託された。ポアロはあることに気付く。それは、殺された人物が、かつて米国の名家アームストロング家で発生した残虐な誘拐殺人事件の容疑者だったのだ。犯人は、殺された人物がその事件の容疑者であることを示す手紙を焼却したのだが、ポアロはそれを復元したのだった。

ポアロは乗客全員から話を聞くとともに、手荷物も調べる。ここで2つの手掛かりが明らかになっていく。多くの乗客たちが、赤い服を着た女性と偽の車掌をみかけていたのだ。しかし、乗客にはそれぞれアリバイがあった。赤い服を持つ女性は見つからなかった。偽の車掌が着ていた制服は乗客のバッグから見つかったが、誰が偽の車掌を演じていたのか不明のままだった。

ポアロはここで壁に突き当たるが、乗客の嘘を次々と暴いていく。そして、一見互いに無関係と思われた乗客たちが、それぞれアームストロング家とつながりを持っていたことを緻密に暴き出していく。つまり、乗客全員がアームストロング家の誘拐殺人事件の容疑者を殺害するためにこの列車に乗り込んでいたのだった。。。

 

 

乗客全員が犯人であり、しかも全員が殺害の実行犯でもあったという結末はあまりに衝撃的です。

そして、ポアロが乗客の嘘を暴いていく過程がとてもスリリングです。完全犯罪を目指して緻密に構築された事件のはずが、いくつかの誤算によってそれが崩壊していきます。誤算の1つは、殺害された人物がアームストロング家の誘拐殺人事件の犯人であることをポアロが特定したこと。もう一つの誤算は、オリエント急行が雪で立ち往生してしまったこと。当初の目論見では、犯人は偽の車掌として犯行を犯した後、途中の駅で逃げたと見せかけるようになっていたのが、列車が立ち往生してしまったため、乗客の中に犯人がいることが確実となってしまったわけです。

 

アームストロング家の誘拐殺人事件は、実際にあったリンドバーグ子息誘拐事件をモデルにしているそうですが、そうした実在の事件に着想を得て、多くの国境を越えて走る国際特急の中で様々な国籍の人々が積年の恨みを果たす、というプロットは素晴らしいとしか言いようがありません。

さすがミステリーの古典です。