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「ウォール街」★★★★

 

 オリバー・ストーン監督による1987年の作品です。証券マンが投資家に近づくに連れて徐々に倫理観が崩壊し、あげくに不正取引に手を染めていってしまう過程が興味深く描かれており、バブルの頃の雰囲気が伝わってくる作品です。

 

 証券マンのバド・フォックス(チャーリー・シーン)は、実績をあげるために大物投資家のゴードン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)に近づき、やがて信頼を勝ち取っていく。ゴードンから取引に有利な情報を取るように圧力をかけられたバドは、航空会社に勤務する父親からの情報をゴードンに伝え、大きな利益をもたらした。

 

バドはこうしてゴードンを顧客としてつかむことに成功し、普通は手の届かないようなゴージャスな女性をも手にすることになる。

 

バドはゴードンの力を借りて、父親の務める会社の立て直しを図ろうとする。ゴードンに株を買い占めてもらい、上からの力で従業員の給与のカットを行おうという計画だった。組合委員長でもある父親に相談するが、父親は強硬に反対する。

 

しかし、バドは、ゴードンが航空会社を切り売りしようとしていることに気付く。バドはこれを阻止するために、ゴードンのライバルである投資家と連携し、株価が急落させて、ゴードンが株を手放すように持っていき、そのときを狙ってライバル投資家に株を買い取ってもらった。

 

こうして航空会社を解体の危機から救うことに成功したが、バドを待ち受けていたのは、インサイダー取引容疑での逮捕だった。。。

 


ウォール街 (Wall Street) - YouTube

証券マンがバブルの雰囲気の中でいかにして倫理観を失い転落していくかをうまく描いた作品だと思います。バドは途中でゴードンのやり方に疑問を持ってゴードンの対決していくわけですが、そうした反撃がうまく成功して終わりというのであれば、単に薄っぺらい正義感を取り上げた作品で終わってしまうわけですが、この作品では最後にバドが逮捕されるという結末となっているところが良かったと思います。

つまり、ゴードンと手を組んで航空会社の株で利益をもたらしたこともそうですが、ライバルの投資家と組んでゴードンに反撃した手法自体も実は犯罪なわけです。このことは、この時間の正義や悪の概念自体が混乱していたことをよく表しているように思います。

 

それにしても、労働者として真面目に働いてきたバドの父親の頑なな倫理観は見てて気持ちのいいものです。オリバー・ストーン監督も、おそらくウォール街的な美意識よりもこうした労働者的美徳を高く評価したかったのだと思いますが、この作品以降も、ウォール街における倫理観が改善されていないことは周知のとおりです。