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「イングリッシュ・ペイシェント」★★★★★

 

イングリッシュ・ペイシェント [DVD]

イングリッシュ・ペイシェント [DVD]

 

 アンソニー・ミンゲラ監督による1996年の作品です。これまで3回は見ましたが、自分の中では最高傑作の映画の一つです。砂漠の映像の美しさ、過去を回想しながらの絶妙なシナリオ構成は完璧です。

映画は、砂漠の上空を飛行する飛行機に乗った男女が撃墜されるシーンから始まります。前の座席に乗った女性はぐったりしている。後部座席の男は撃墜で大やけどを負い、野戦病院に運び込まれ、自分の名前も思い出せず、イングリッシュ・ペイシェントと名付けらる。

従軍看護婦のハナは、親しい人々が戦争で次々と亡くなったショックから、廃墟となった寺院に男性を運び込み、看病することに。そこに、男性を知る一人の男が廃墟にやって来る。男性は自分の過去を次第に思い出していく。

男性はアンソニーという英国人で、冒険家として砂漠にやって来た。英国地理協会のメンバーと合流したが、そこにはジェフリーとキャサリンの夫妻がいた。ジェフリーが一時的に砂漠を離れたとき、アンソニーとキャサリンは親しい関係となる。

ジェフリーも二人の関係に気がつき始め、あるとき、ジェフリーが操縦してキャサリンを乗せた飛行機がアンソニー目がけて突っ込んでくる。飛行機は大破し、ジェフリーは死亡し、キャサリンは重傷を負う。アンソニーはキャサリンを砂漠の洞窟の中に寝かせ、救援を求めに一人砂漠を通って街を目指す。

ようやく街に辿り着いたが、アンソニーは英国軍に助けを求めたが、その外国名を怪しまれ、拘束されてしまう。かろうじて脱出をしたが、アンソニーは止むを得ず敵国ドイツ軍に地図を渡し、飛行機を借りてキャサリンの救援に 向かった。しかし、キャサリンは既に亡くなっていた。。。


The English Patient Trailer - YouTube


こうして、冒頭の場面に繋がってくるわけですが、この繋がりが極めて圧巻です。

こうしたアンソニーの回想シーンが映画の中心ですが、そこに、看護婦のハナとインド人技師の淡い恋愛関係が混じり合い、映画に深みを生み出しています。

寺院にやって来た男は、アンソニーがドイツ軍のスパイだったと疑って、アンソニーを殺しに来たのですが、アンソニーがキャサリンを助けるためにやむなく地図を渡したことを知り、殺害を断念します。イギリス人でありながら、その名前が故にドイツ人と疑われ、火傷を負った後はイングリッシュ・ペイシェントと名付けられてしまうという皮肉な状況から、映画のタイトルが付けられています。

映画は主人公のアンソニーが人妻と不倫するストーリーですから、主人公に共感できないという見方もあるかもしれません。確かにそうですし、アンソニーの禁断の恋によって多くの人々の命が奪われたのも事実ですが、アンソニー自身も相応の代償を負っているわけで、最後は息を引き取っていくわけで、ある意味、公平な結末と言えるかもしれません。

 ちなみに、アンソニーのお気に入りの音楽として作品中に登場するのが、フレッド・アステアの♪Cheek To Cheekと、ベニー・グッドマンの♪The Wang Wang Bluesです。


Fred Astaire - Cheek to Cheek - YouTube


The Wang Wang Blues Benny Goodman Sextet 78 ...