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「やがて哀しき復讐者」★★★★☆

 アンソニー・ウォンの好演が光る2011年の香港映画です。

 不動産会社を営むウォン(アンソニー・ウォン)は、妻に先立たれ、後妻(マギー・チョン)がいるが、娘のデイジーは後妻になじめず、薬物に溺れた生活をしている。そして、夕食会でデイジーがボリビアの塩湖に行きたいと言ったことがきっかけで父娘は口論となり、娘は家を飛び出した。娘はそのまま誘拐されてしまう。

 ウォンは当初は自作自演を疑うも、犯人から言われた金を用意したが、その金は奪われてしまう。犯人はデイジーを殺害する。

 ウォンは犯人たちへの復讐を誓う。復讐の実行役を務めたのは、片腕のチュウだった。チュウは誘拐に関わった男たちへの復讐を遂げていく。犯行には秘書のエイミーが関わっていたことも判明。ウォンとチュウはエイミーの家に押しかけ、エイミーは逃げようとして建物の屋上から転落寸前の状況となる。一度はエイミーを見放したウォンだったが、エイミーの娘と自分の娘が重なって見えたため、最後はエイミーを助ける。

 ウォンは娘が行きたがっていたウユニ湖に娘の遺骨を撒くところで作品は終わる。。。

 原題は“Punished”ですが、邦題の方が雰囲気が出ていて個人的には良いと思います。

 娘の誘拐を手助けしたエイミーが建物に宙づりの状態となっているところを、最後ウォンは手を差し伸べるわけですが、この辺の心の揺れ動きというのは、さすが香港映画だなぁと感心しました。ハリウッド映画だったら何のためらいもなく見放してしまうところかと思いますが、こうした繊細な心の動きを描写することができるのは香港映画ならではだと思います。

 ボリビアの美しい塩湖の光景が作品の冒頭と最後に配置されているのも、大変効果的だったように思います。

 途中、全く緊張が途切れることなく観る人を惹きつける大変素晴らしい作品でした。