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ジェフリー・アーチャー「ロスノフスキ家の娘」

ロスノフスキ家の娘 (上) (新潮文庫)

ロスノフスキ家の娘 (上) (新潮文庫)

 1982年に発表された小説で、著者の出世作「ケインとアベル」の続編に当たる作品です。

 前半部分は、前作をなぞったストーリーとなっており、アベルの娘でケインの息子と結婚したフロレンティナの生涯が再度描かれています。ただ、前作にはなかった新たな要素も加わっており、フロレンティナの家庭教師のミス・トレッドゴールドがフロレンティナの人間形成にとって大きな役割を果たしたことになっていたり、フロレンティナの大学でのルームメイトのベラ・ヘラマンが生涯のフロレンティナのサポーターの役割を果たすことになっていたりします。

 本作品の後半では、フロレンティナが政界に進出し、初の女性大統領になるまでを描いています。フロレンティナは民主党の下院議員、上院議員として活躍し、女性大統領候補としての期待が高まっていきます。そして、民主党の候補者指名選挙はピート・パーキンと争いになります。フロレンティナが有利な状況の中、パーキンはフロレンティナに面会を求めます。そこでパーキンが提案したのは、フロレンティナがおりれば副大統領の地位をフロレンティナに与え、かつ、大統領を一期務めた後はフロレンティナが大統領になるよう応援するというものだった。フロレンティナはその場では後ほど返事する旨を伝え、後ほどパーキンに対し取引を断る旨を伝えます。ところが、パーキンは、この取引を提案したことを公にしてしまい、しかもフロレンティナがこの提案をよく検討したいと回答したというところまでを話し、その後フロレンティナがこの取引を断ったところは話さなかったのでした。このため、両者の争いはパーキンに有利となり、フロレンティナは敗れることになります。

 フロレンティナは退屈な副大統領を務めることになりますが、パーキンの禅譲の提案もあやふやなものになっていきます。パーキンは、フロレンティナのライバルであるラルフ・ブルックス国務長官に任命しており、どうやらフロレンティナに地位を禅譲するつもりはなさそうです。

 そんな中、ソ連パキスタン侵攻に向けた準備を進めていることが明らかになります。大統領のパーキンは私用で不在にしており、指揮を執れる状況にありません。フロレンティナは、ラルフらの慎重論を押し切って、ソ連に対して強気の姿勢を取るよう軍に指示しました。

 ようやくパーキンがワシントンに戻りますが、パーキンはフロレンティナの決断を覆そうとします。が、ソ連はフロレンティナの強気が功を奏し、撤退を開始します。アメリカはソ連に対する威厳を保ったのでした。パーキンはこの手柄を自分のものにしてしまいます。

 しかし、最後にどんでん返しが。フロレンティナの夫リチャードは、自動車事故で亡くなっていました。フロレンティナの古くからの友人でフロレンティナを支え続けてきたエドワードは、フロレンティナとの結婚を求めていましたが、そのためにフロレンティナが出した条件は、ゴルフでフロレンティナに勝つことでした。

 ある日2人がゴルフをしていたところ、急遽頭上にヘリコプターが。ヘリコプターから降りてきた将校から伝えられたのは、大統領の死でした。

 このハプニングでゴルフの途中でホールアウトしたことで、エドワードはフロレンティナに勝利したことになり、フロレンティナはエドワードとの結婚を認めます。エドワードはアメリカ大統領の就任に向かうフロレンティナを笑顔で見送ったところで話は終わります。


 アメリカの政治・社会を舞台にしているからこそ、これだけ壮大なストーリーが可能となるように思います。ラストのどんでん返しはさすがジェフリー・アーチャーです。単に大統領になるというだけでなく、長年フロレンティナを愛し、献身的に支えてきたエドワードとの結婚が成立するところは、本当に憎い演出です。

 読者の期待を決して裏切らない著者の作品ですが、本作品も大変楽しめました。