- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2010/07/14
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イタリアの山奥にあるベネディクト修道院にウィリアム(ショーン・コネリー)とその若い弟子のアドソ(クリスチャン・スレーター)らの修道士たちが論争のために全国から集まってきた。その修道院では若い修道士が変死する事件が発生したばかりであり、ウィリアムは修道院長から事件の解決への助言を要請される。
変死した若い修道士は自殺と見られた。その後、翻訳を行っていた修道士も死を遂げたが、これは明らかに殺人であった。さらに、修道院の副司書も不審な死を遂げる。ウィリアムは、この修道院の長老ホルヘとの間で、キリスト教が笑いを許容しているかどうかについて激しく論争する。そうした中、この修道院が何か書物を隠していて、それが殺人事件と関係しているのではないかと疑いを抱く。
ウィリアムとアドソは、固く閉ざされていた修道院の文書庫につながる通路を発見する。そこはまるで迷路のような構造だった。奥の扉を開けるには暗号が必要だった。
ついにその暗号を解き、扉を開けると、そこにいたのは長老のホルヘだった。ホルヘが頑なに守っていたのは、アリストテレスの『詩学・第二部」の中の笑いの記述だった。アリストテレスが笑いを許容している記述を多くの人びとに知られれば、教会の権威が揺らぐことにつながることを恐れていたのだった。
その後、文書庫は燃え、ウィリアムとアドソは修道院を去っていく。。。
この映画を見ると、西洋のキリスト教世界でいかに不毛な議論が繰り広げられていたのかが分かります。山奥の修道院に男だけが集まり、自分たちの威厳をどのように守るかなどについて議論を繰り広げているシーンが多々出て来ますが、今から見るととても滑稽です。
この作品の中でキーワードとなっているのが「笑い」です。キリスト教が笑いを認めているかどうかがテーマとなるくらい、中世ヨーロッパは殺伐とした時代だったのでしょう。今でこそヨーロッパの文化といえば華やかな印象がありますが、もともとヨーロッパ中世は暗黒の時代であり、むしろイスラム文化の方が華やかな面があったわけです。この作品の一貫した薄暗い雰囲気は、当時の雰囲気とぴったり一致しているように思われます。
本作品で唯一華があるとすれば、アドソと地元の貧民の少女との淡い恋愛でしょう。アドソにとって初めての相手だったこの少女が火あぶりの刑に処せられる直前に文書庫が火事となり、少女は一命を取り留めます。そして、修道院を離れるアドソと少女の切ない永遠の別れが、この作品における一つのアクセントとなっています。
最後まで飽きさせない素晴らしい作品でした。