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「夏の夜は三たび微笑む」★★★★☆

夏の夜は三たび微笑む [DVD]

夏の夜は三たび微笑む [DVD]

 イングマール・ベルイマン監督による喜劇作品です。

 弁護士のフレデリックは息子のヘンリックと若い後妻のアンと暮らしていた。後妻のアンはフレデリックとは親子くらいの年の差であり、2人はいまだに肉体関係がなかった。

 フレデリックとアンはある日舞台を見に行った。そこに主演していた女優のデジレは、フレデリックのかつての恋人であり、フレデリックはデジレにふられたのだった。

 フレデリックは再会したデジレの家に招かれたが、デジレには妻子持ちの恋人マルコム伯爵がいた。デジレの家でフレデリックとマルコムは鉢合わせることになり、フレデリックは追い出される。

 ある日、デジレは母親の邸宅のパーティーにフレデリック夫妻と息子のヘンリックと女中のペトラ、マルコム夫妻を招いた。デジレは密かにフレデリックとのよりを戻したいと思っていた。

 晩餐では、初産の女の乳と男の精子が入っているといういわくつきのワインが出され、それを飲んだ後、招かれた人びとの関係がおかしくなっていく。

 結局、アンはヘンリックと駆け落ちしてしまい、フレデリックは離れ家でマルコムの妻といるところを見つかり、フレデリックとマルコムはロシアンルーレットで対決する。ピストルには結局弾は入っていなかったが、マルコム夫妻は元どおりに収まり、フレデリックはデジレと結ばれた。女中のペトラは御者との婚約が成立する。。。


 話の展開には何ら脈絡はないのですが、男と女それぞれの心の奥底が白日にさらけ出されるような巧さは、さすがベルイマン監督です。これまで鑑賞したベルイマン監督の作品は、『処女の泉』や『秋のソナタ』『サラバンド』など、どちらかというと哲学的で重厚なものだったのでしたが、そのギャップにだいぶ困惑はしましたが、人間心理の深い表現形式という意味では共通しています。

 本作品は興行的な成功が求められていたため、最後まで容赦なく人間性に切り込んだまま終わる作品が多いベルイマン監督にしては、結末も比較的受け入れやすいものとなっており、見やすい作品となっています。