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「グランド・ブダペスト・ホテル」★★★★

 ウェス・アンダーソン監督による作品で、コメディ作品ともシリアス作品ともつかない独特の世界観を持った作品です。

 舞台はズブロフカ共和国というヨーロッパ東端に位置する国。そこにグランド・ブダペスト・ホテルがあった。ある作家がそのホテルを訪れた際、そこにはホテルのオーナーのゼロ・ムスタファが滞在していた。作家はムスタファと食事をしながら、ゼロ・ムスタファの過去の話を聞く。

 ゼロはグランド・ブダペスト・ホテルのベルボーイとして採用された。当時のコンシェルジュはグスタヴで、ゼロはグスタヴの指導を受けて成長していった。グスタヴはホテルの常連だったマダムと懇意にしていたが、そのマダムが亡くなると、マダムの邸宅にゼロと共に訪れ、息子たちの相続争いに巻き込まれることになる。そして遺言に基づき「少年と林檎」という絵画を持ち出したところ、盗みの罪を着せられ、刑務所に入れられてしまう。

 グスタヴは刑務所の仲間とともに穴を掘って脱走する。グスタヴとゼロはマダムの息子に追われるが、やっとのことで逃げ切り、そして、マダムから絵画の相続を受けたこともはっきりとして濡れ衣が晴れ、グスタヴはグランド・ブダペスト・ホテルを受け継ぎ、そしてゼロがその後を継いだのだった。。。

 ウェス・アンダーソン監督は作品のエンドロールの中で、ツヴァイクの著作にインスパイアされたとしています。このツヴァイクの作品というのは『心の焦燥』『昨日の世界』『変身の魅惑』などの作品のようです。私はこれらの作品を読んでいないので、どのようにインスパイアされたのか分かりませんが、ツヴァイクとこの作品との関係については、映画評論家の町山智浩氏のブログでまとめられています。
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20140604

 そして、この作品の特徴は、人形劇を思わせるコミカルな映像表現でしょう。グランド・ブダペスト・ホテルまで登っていくケーブルカーの映像、スキーでのチェイス場面の映像、いずれもユニークな表現手法です。

 第二次大戦の勃発という重いテーマとコメディチックな映像などのコミカル要素が織り交ぜられた独特の世界観が素晴らしい作品を築き上げています。