- 作者: 橘玲
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2014/04/10
- メディア: 単行本
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シンガポールでファンドマネージャーの北川康志がホテルから転落死した。その妻である紫帆は昔の友人である牧島に電話し、2人は一緒にシンガポールに向かうことになる。そこで2人はスイスSG銀行の行員から接触を受け、夫の北川の借金を帳消しにする代わりに一切の請求権を放棄するという不審な取引を持ちかけられる。牧島はその場で旧友の古波蔵に相談し、結局契約にサインしなかった。牧島と紫帆と古波蔵の3人は高校時代の同級生だった。
調べていくうちに、原発輸出のための資金として、北川は大物政治家やヤクザの危ない資金を集めていたことがわかった。そして莫大な資金がどこかに消えていたのだ。そして、北川にはシンガポールにも家族がいたことが分かる。
北川のパソコンのデータを復元すると、スイスSG銀行の行員が北川とつるんで、顧客から預かった莫大な資金を別の口座に移し替えていたことが判明する。そして、そのうちの多くがカンボジアの口座に送金されていた。
牧島は紫帆の過去についても知ることになる。紫帆は東京と大阪のホステスとして、大物政治家の愛人であった。そして、北川とその大物政治家を結び付けたのも紫帆だった。北川は大物政治家との接点を求めて紫帆と結婚したのだった。
北川が送金した先のカンボジアの口座は北朝鮮関係であることが分かる。北川は北朝鮮の工作員と密接なつながりがあったのだった。そして、顧客の資金に多額の穴を空けた北川は命を狙われることになり、シンガポールで殺害されたのだった。
牧島は紫帆と一緒に暮らしていくことを決意する。。。
日本とシンガポール、そしてさらにはタイ、カンボジアや北朝鮮ともつながっていくスケールの大きな作品でした。国際政治情勢もしっかりと組み込まれていて、大変リアル感のある作品となっています。
牧島、紫帆、古波蔵という3人の元同級生のふわっとした三角関係も、物語の適度な装飾となっています。散々男を利用して派手な道を歩んできた紫帆が、子供とともに牧島と一緒になり、新たな形の幸せを模索し始めるというエンディングも大変好感が持てます。
読み応えのある素晴らしいミステリー作品でした。