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映画、書評、ジャズなど

「恐怖のメロディ」★★★

恐怖のメロディ [DVD]

恐怖のメロディ [DVD]

 若かりしクリント・イーストウッドが監督した作品です。要は主人公がストーカーに付きまとわれるという内容です。

 デイブ・ガーランドクリント・イーストウッド)は、地元のラジオ番組で人気のディスク・ジョッキーだったが、その番組にたびたびエロール・ガーナーの♪Mistyをリクエストしてくるリスナーがいた。デイブが行きつけの酒場に飲みに行くと、そこにいた女こそがいつも利癖ストしてくる女のイブリンであった。デイブはイブリンと一夜限りのつもりで関係も持つ。
 イブリンはデイブに付きまとい始める。恋人のトビーがいたデイブは、イブリンを避ける。イブリンは執拗に付きまとい、やがてデイブの部屋で自殺未遂をしたり、デイブのメイドを殺そうとする事件を起こした。イブリンは病院に送られたが、やがて退院し、自分はハワイに行くとデイブに伝えた。
 デイブはイブリンの復讐を恐れていた。恋人のトビーの安否も心配だった。トビーは自分の家にルームメイトと住んでいたが、アナベルという女が新しいルームメイトとして来ることになった。デイブはイブリンが口にした詞が気になっていたが、それがエドガ・アラン・ポーのアナベル・リーだったことに気がつく。イブリンは恋人のトビーに復讐を企てていたのだった。
 ラジオの番組中だったデイブは、すぐさまトビーの家に向かう。家に着くと、先に向かっていた警察官が刺されて倒れていた。家に入るとトビーが縛られており、イブリンが襲いかかってくる。イブリンの攻撃をかわしながら、デイブはイブリンを殴り、イブリンは崖下の海に転落していく。。。

 原題は『Play Misty for Me』で、この作品の軸を成しているのがエロール・ガーナーの♪Mistyです。 ゴージャス感だっぷりの名演で知られるこのナンバーですが、この作品を見るまでは、とてもしっとりとした印象のイメージを持っていたのですが、この作品では最後海に浮かぶイブリンの死体のバックにこの曲が流れますので、この曲に対するイメージを大きく転換せざるを得ません。今後この曲を聴くと、おそらくとてもゾッとするようなおぞましい光景を思い浮かべることになるでしょう。

 この作品は、一言で言えばストーカーに付きまとわれるストーリーです。それも一夜限りの関係も持った主人公のデイブの自業自得でもあるわけで、どうしても主人公に共感することができません。クリント・イーストウッドも終始ニコリともせず気取った表情で、どうも演技に深みを感じません。随所に鋭いカメラワークを感じるものの、作品全体の出来はあまりほめられるものではありません。

 後に偉大な数々の作品を世に送り出すことになるクリント・イーストウッドですが、若かりし頃にはこんな映画も作っていたんだ、というのが正直な印象です。


P.S.ちなみに、イーストウッドはインタビューの中で、♪Mistyを採用した経緯を以下のように述べています。

−脚本の最初の段階から、使う曲は「ミスティ」だったんですよね?
「そう、あれはあの脚本家の案だ。当時の私はユニバーサルと仕事をしていたが、彼らはあの曲をあきらめるよう私を説得していてね。というのも、彼らは版権が高額過ぎて使うのは無理だと考えていたんだ。でもあの曲はポップスとジャズとその他諸々の要素を含んだいい曲だと私は思っていた。あの頃は音楽がますますロックンロール寄りになってきた時代だったが、この映画は“誰もが覚えている名曲”を軸にした内容だったからね。最終的に私の方が彼らを説得し「ミスティ」を使うことができた。エロール・ガーナーを呼び戻してエンドロールのために彼の演奏を録音し、すこし音を大きめにしておいた。」(2008.8『PLAYBOY』に掲載されたアンドリュー・ギルバート氏によるインタビュー記事)