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映画、書評、ジャズなど

「マッチポイント」★★★★★

 ウディ・アレン監督の2005年の作品です。テニスのネットに引っかかったボールがどちらのコートに落ちるかということで、人生は運が多くを支配するというテーマをモチーフにした作品です。

 テニスプレイヤーのクリスはプロとして生きる道を諦め、テニススクールのコーチの職に就いたが、そこに生徒としてやってきた金持ちの息子トムと意気投合。オペラに誘われた際にクリスはトムの妹クロエと出会い、クリスとクロエは結婚することになる。クリスはクロエの父親にも気に入られ、父親の会社に職を得て安定した暮らしを手にする。

 トムは女優の卵であるノラと婚約していたが、トムの母親はノラとの結婚に反対していた。クリスはノラを一目見て燃え上がり、2人は不倫関係になる。その後、トムはノラとの婚約を破棄し、別の女性と結婚する。その後ノラの行方は分からなくなっていたが、クリスは偶然ノラの姿を街でみかけ、連絡先を聞き出す。その後2人の不倫関係は再び始まるが、やがてノラはクリスの子供を妊娠する。堕ろすことを求めるクリスに対し、ノラはクリスに対して、クロエと別れることを強く迫った。

 板挟みとなったクリスは、ノラの隣人の老婆に対する強盗を偽装して老婆を射殺し、偶然出くわしたふりをしてノラを射殺する。

 事件は麻薬絡みの殺人と見られたが、ノラの日記にはクリスとの不倫が綴られていた。刑事はクリスを一旦は疑ったものの、その後、同じ地区で同様の麻薬絡みの殺人事件が発生し、その犯人がノラの隣人で射殺された老婆の名前が入っていた指輪を所持していたことが分かり、クリスへの嫌疑は晴れた。

 やがてクリスとクロエの間には子供が誕生し、再び幸せな生活が戻ったのだった。。。

 最後クリスの嫌疑が晴れるきっかけとなった指輪は、クリスが老婆から奪って、川に向かって投げ捨てたものでしたが、他の盗品は川に到達したものの、指輪だけが川縁の手摺りに当たり、跳ね返ってきたのでした。これはテニスのネットに引っかかったボールと同様、クロスの運を大きく左右しました。

 ただ、クリスは強運によって幸せな生活を手にすることができたかといえば、人生はそんな単純な問題ではありません。ラストのシーンで、子供が誕生して大喜びする一家を横目に、クリスの表情は絶望に満ちあふれています。これから罪悪感を抱えて生きていかなければならないことを考えれば、当然のことでしょう。運が強ければ幸せな生活を送れるかといえば、人生はそんな単純ではないということを、この作品は表現しているように思います。

 ノラを演じるスカーレット・ヨハンソンの色気もとても印象的です。

 さすがウディ・アレン監督。人生の深みを巧みに表現した作品でした。