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映画、書評、ジャズなど

大竹伸朗3PROJECTS

文化 地域

 今、四国で大竹伸朗さんの3つのプロジェクトが同時に行われています。丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で行われている『ニューニュー』、高松市美術館で行われている『憶速』、そして瀬戸内国際芸術祭2013の一環として女木島で展示されている『女根』です。

 今回四国を訪れる機会がありましたので、この3つのプロジェクトを駆け足で巡ってきました。

女木島『女根』

 今回の瀬戸内国際芸術祭では範囲がぐっと広がり、女木島でも開催されています。普段はなかなか足を運ぶことはないと思われる島ですが、こうして展示をやっていることが訪れるきっかけとなります。

 瀬戸内の島々の間を走るフェリーで女木島に着くと、港の近辺でいくつかの展示をやっていました。まず足を運んだのは、愛知県立芸術大学の“NANAIRO-なないろ-”という展示をやっているMEGI HOUSEです。

 愛知県立芸術大学が世界の7つの芸術大学とコラボしてやっている展示のようです。木造建築を活用して、庭には木の床が張り巡らされ、いくつかのオブジェが展示されています。

 家屋の片隅で“HUMAN:NATURE”と題された映像展示がありましたが、女木島の人びとの関係性を映像とともに分析・紹介するユニークな手法を用いたものです。

 さて、その後、レアンドロ・エルリッヒの展示を見た後、ようやく大竹伸朗さんの『女根』にたどり着きます。

 休校となっている小学校を舞台にした展示です。学校の門から校舎の中を通り、中庭に抜けると、突如として、学校には似つかわしくない異様な物体が目に入ります。

 オレンジ色の物体は、宇和島沖に漂着した大きさ8メートルのブイ。その横に、メインのオブジェが立っています。

 中庭の床に埋め込まれたタイルには、昭和の懐かしい感じのスクラップが散りばめられています。

 それにしても、この異様なオブジェ、どう表現してよいのか分からないのですが、とてつもない生命力を感じることだけは間違いありません。凄いパワーです。安易な表現を使えば、一種のパワースポット的な惹きつける力を感じます。

 このオブジェは校舎の2階からも眺めることができます。

 2階にはこのほか、EGO-WRAPPIN'というバンドが演奏する『女根の月』という音楽ビデオが流されていました。大竹伸朗さんが詞を提供されたのだそうです。かったるい歌い方とジトッとした詞・映像が絶妙なバランスの作品です。 『女根』のあとは、『龍潜荘』の愛知県立芸術大学の展示、行武治美の『均衡』といったオブジェを見てきました。

 それにしても、女木島は案外砂浜リゾート的な風景もあるなど、多彩な顔を持った島です。海岸の向こうに高松市の街並みが見えるなど、なかなか面白い風景が広がっています。

 こういう側面が発見できるのも、アートがこの島で展示されていることでわざわざ足を運んだからです。そういう意味で、やはりアートの力は偉大です。

高松市美術館『憶速』

 次に向かったのは高松市美術館大竹伸朗さんのこれまでの作品群を一気に総覧するのにふさわしい企画です。大竹さんは宇和島、北海道、ロンドン、アフリカ等々、様々な地域に足を伸ばされ、インスピレーションを得ながら創作活動をされてきています。それぞれの地域で画風やタッチの異なる作品が一同に見られ、大変興味深い展覧会でした。

 大竹さんのこれまでしたためられてきたスクラップがズラッと並んでいるのも珍しい光景です。

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館『ニューニュー』

 丸亀駅に着くとすぐ駅前に猪熊弦一郎現代美術館があるのですが、まずびっくりさせられるが、美術館の屋上に『宇和島駅』のネオン看板が設置されていることです。

 このネオン看板はある意味で大竹さんの代表作の一つと言えるのではないかと思うのですが、何の変哲もない駅の看板を大竹さんが注目して引き取り、作品としているものです。それにしても、丸亀駅前に宇和島駅の看板という何とも絶妙な違和感が印象的です。

 この美術館の展示はカメラ撮影OKということでしたので、多くの作品をカメラに収めることができました。

 メインのオブジェは、ドイツのドクメンタ13に出展された『モンシェリー:自画像としてのスクラップ小屋』でしょう。独特の存在感を放つ建造物です。 

 入り口近くの天井からは『時憶/雲』と題されたオブジェがぶら下がっています。

 また、『焼憶』と題された作品は、金色の便器や無数のスクラップから構成されている作品です。これほど生命力を感じる便器というのはこれまで見たことがありません。

感想

 こうして駆け足で大竹伸朗さんの3つのプロジェクトを見てきたわけですが、独特の大竹伸朗さんの世界観を存分に堪能できました。

 『憶速』を見て感じたのは、大竹さんの画風の幅広さです。印象深いのは昭和の残像のようなタッチの絵が多いのですが、例えばアフリカで描かれた絵はピカソキュービズムのような色合いが強く出ていました。その土地土地のパワーを吸い込んで絵に投影されているのかもしれません。

 『女根』はさすが大竹ワールド全開の作品でした。エロスから発せられる生命力という意味では、これまでのどの作品よりもパワフルだったように思います。島の持つ磁場と作品の磁場がピッタリと合致していることで、もの凄い磁場を生み出しているように思えるのです。

 そして『モンシェリー』。これも一つの生命体のようなオブジェです。中を覗いてみると、ギターが勝手にギコギコ動いて雑音ともつかぬ音声を発しています。

 大竹伸朗さんは今一番力強い美術家の一人であることは間違いありません。有り余る創造力を様々なジャンルに活かされて活動されています。今後ますます世界で注目されていくことは間違いないように思います。今回の3つのプロジェクトはその意味で見逃せない貴重な機会ですので、是非足を運んでみてください。