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「華麗なるギャツビー」★★★★

 ご存じスコット・フィツジェラルド原作の小説を映画化した作品です。「ジャズ・エイジ」と呼ばれたアメリカの1920年代の馬鹿騒ぎの時代を舞台にした作品です。

 ニューヨークの郊外に住むニック(トビー・マグワイア)が回想する男ギャツビー(レオナルド・デカプリオ)は、海に面した大豪邸で毎日のように大宴会を催し、招待もされていない客が大勢集まって毎晩馬鹿騒ぎが繰り広げられていた。ニックの従姉妹のデイジー(キャリー・マリガン)は夫で資産家のトム・ブキャナン(ジョエル・エドガー)と共に大豪邸に住んでいたが、ギャツビーは湾を挟んでブキャナン夫妻の邸宅が眺められる邸宅に住んでいた。

 ギャツビーの生い立ちは明らかでなく、様々な噂が立っていた。ギャツビーはニックには心を開き、ニックに対してはパーティーの招待状を送った。そして、ニックにディジーとのお茶会のセットを依頼する。実はギャツビーは若かりし頃ディジーと恋に落ちていたものの、ニックが出征している間に、ディジーは現在の夫であるトムと結婚してしまったため、ギャツビーは今でもディジーのことが忘れられないでいたのだった。

 他方、トムは遊び人でニューヨークの貧しい整備工の妻と不倫関係にあった。ディジーはそんなトムの不倫を薄々感じていたのだった。こうした久しぶりに再会した2人は当初ぎこちなかったものの、すぐに打ち解け、昔のような恋愛関係に陥った。ギャツビーはディジーに対し、トムと別れて自分と一緒に住むように説得する。

 こうしてギャツビーとブキャナン夫妻、そしてニックも入った会議が開かれた。そしてトムはニューヨークのホテルに場所を移すことを提案。皆はニューヨークのホテルに向かう。結局、ディジーはギャツビーと一緒にホテルを飛び出していくが、そこで事件が起こる。

 2人の乗った車が、トムの不倫相手の整備工場の前を通ったとき、不倫相手はトムが乗った車だと思い道に飛び出し、車に跳ねられて命を落としてしまう。2人の車はそのまま立ち去ってしまった。不倫相手の夫の整備工は妻を失ったことへの復讐を誓う。運転手はギャツビーだと思われたが、実はディジーであったことをニックはギャツビーから聞かされる。

 ギャツビーはディジーと共に逃避行に出ることを誓い、ディジーからの連絡を待つが、一向に連絡は来ない。やがて整備工はギャツビーの邸宅を突き止め、ギャツビーを射殺し、自殺する。

 ディジーはちゃっかりとトムと仲直りし、ギャツビーの葬儀にも出席せず、家族で旅立っていった。ギャツビーのパーティーにはあれだけ多くの人びとが集まっていたにもかかわらず、ギャツビーの葬儀にはニック以外誰も顔を出さなかった。。。


 この小説は村上春樹氏が心酔されていることは有名です。アメリカのジャズ・エイジを舞台に、お金持ちでありながら、恋を健気なまでに一途に貫き、そして一途に命を落としてしまう、しかも相手には裏切られてしまうというギャツビーの切ない生き方がとても哀しい物語です。

 かつても映画化されていますが、さすが映像の迫力は今度の作品の方が圧倒的です。前の作品は一度見たものの、はっきりとは覚えていないのですが、確か作品全体に漂う哀愁はよく表現されていたように思います。今回の作品は、正直なところ、どうしてもデカプリオのキャラクターが強すぎて、最後までギャツビーの哀愁漂うキャラクターとどうしても重ならないままで終わってしまったような感じでした。トビー・マグワイアが演じたニックはぴったりの配役だったと思いますが、ギャツビーの配役は、華やかさの中に影があるような俳優を当てるべきだったような気がします。

 とはいうものの、作品のストーリー自体は大変面白く、うまくできている作品なので、大変楽しめる映画でした。

 ギャツビー邸のパーティーでガーシュインの♪Rapsody In Blueが流れるシーンは圧巻でした。