読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる
映画、書評、ジャズなど

「蒲田行進曲」★★★★★

あの頃映画 「蒲田行進曲」 [DVD]

あの頃映画 「蒲田行進曲」 [DVD]

 ご存じこの作品は最高の喜劇邦画作品だと思います。久しぶりに見直してみたのですが、実によくできた脚本です。

 舞台は新撰組の時代劇が撮られている撮影所。倉岡銀四郎(風間杜夫)は花形のスターだった。銀四郎には小夏(松坂慶子)という駆け出し女優の恋人がおり、そのお腹には銀四郎との間の子供がいた。しかし、銀四郎は将来ビッグスターになる自分にとってふさわしいと考える他の恋人がいたため、小夏を自分の子分の大部屋俳優であるヤス(平田満)に譲り渡し、結婚するように依頼する。ヤスは銀四郎を慕っており、世話にもなっていたので、この依頼を受け、小夏と結婚することになる。小夏は銀四郎への未練が残っているが、ヤスと一緒にヤスの故郷で盛大な歓迎を受け、ヤスの母親からヤスのことを裏切らないでほしいと懇願され、次第にヤスへの思いが募っていく。
 ヤスは結婚生活のため、そして産まれてくる子供のために、きつい仕事を手当たり次第引き受けるようになるが、ついに死につながりかねない“階段落ち”の役を引き受けてしまう。この役を誰かが引き受けなければ、銀四郎の存在が他のスターの影に埋もれてしまいかねなかったからだった。
 出産を控えた小夏はこれに猛反対する。ヤスの情緒は不安定になり、小夏にも当たり散らすが、ついに”階段落ち”の日がやってきた。撮影現場には映画制作会社のお偉方も大勢詰めかけたが、ヤスは役作りのために時間をじらし、夕食後の夜にようやく撮影が開始された。
 “階段落ち”のシーンの撮影が終わり、ヤスは怪我を負う。ちょうどその後、小夏は出産する。赤ん坊の声を聞いて目を開けようとする小夏であったが、目の前にヤスがいるか不安で目を開けるのを躊躇する。ようやく目を開くとそこに赤ん坊を抱えたヤスが立っていた。そして、撮影が終了し、ベッドの周りを大勢の役者たちが囲んでいた。。。


 この作品の配役は実によくできています。傍若無人であるものの純粋でどこか憎めない愛嬌を持っている銀四郎。派手さを求めながらも心の底では繊細で刹那的な性格が憎めません。
 銀四郎を慕うがために銀四郎から女とお腹の中の子供を押しつけられるという理不尽な依頼を受けてしまい、葛藤に悩みながらも銀四郎を立て続けるヤス。その一途な心意気に心を打たれます。悲壮感漂いながら“階段落ち”に臨むその姿に思わず涙してしまいます。
 そして何と言っても、銀四郎とヤスの間で振り回され続ける小夏。小夏を演じる松坂慶子の変幻自在ぶりに感銘を受けます。銀四郎と付き合っている頃の小夏はどこか派手な女優といった風貌なのですが、ヤスとの結婚生活を大事にしたいと思うにつれて次第に古き良き日本の妻のような清楚な感じに変わっていきますが、その難しい役柄をうまく演じています。 今回見直してみて、この作品は日本人の心の奥底をえぐるような深い心の動きを良く描いていることを改めて感じました。