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映画、書評、ジャズなど

「情熱のピアニズム」★★★★★

映画 ジャズ

 全身の骨が折れた状態で産まれる病気で、成人してからも1メートルの身長だった天才ピアニストのミシェル・ペトルチアーニの生涯をドキュメントにした映画です。よくもここまで映像を撮りためていたと感心してしまいます。かつての愛人やペトルチアーニと同様の障害を持つ息子も登場し、コメントしているところがすごいところです。

 南仏で育ったペトルチアーニは、幼少の頃から外で遊ぶことができなかったため、ギター・ミュージシャンの父親の厳しい指導でピアノを習得し、幼少の頃から天才ピアニストとして活躍します。その後、アメリカ西海岸にわたり、本格的にジャズ・シーンで活躍するようになります。英語もあっという間にマスターしてしまいます。その後、ニューヨークにわたり、そこでも一流のミュージシャンとの共演を果たします。それから再びフランスに凱旋帰国し、36歳の生涯をNYで閉じることになります。

 ペトルチアーニは女性に好かれたようで、生涯で5人の女性と恋愛します。西海岸で酋長の娘と懇意になったり、NYでも恋人ができ、それからホテルのフロントをしていた女性との間に子供ができます(その子供もペトルチアーニと同様の障害を持って産まれてきます。)。さらに別の女性とも付き合い、結婚式も挙げますが、結局うまくいかず別れることになります。こうした女性遍歴はペトルチアーニの人間的魅力を象徴していると言えるでしょう。

 作品中、数々の演奏場面が登場します。チャールズ・ロイドとの共演、そしてウェイン・ショータージム・ホールとの共演などなど。ローマ法王の前で演奏する場面も感動的です。 骨が弱いにもかかわらず、ピアノの鍵盤を叩く力は並大抵ではなく、時には鍵盤の方が持ちこたえられずに壊れてしまうくらいです。指運びの速さも並大抵ではありません。♪She Did It Againの演奏を聴けば、ペトルチアーニの天才ぶりが分かります。 ペトルチアーニはとにかく楽観的です。健常者との違いも前向きに受け止め、違いこそが素晴らしいというペトルチアーニのメッセージが随所で伝わってきます。

 長く生きられないことを悟っていたのか、薬物を含めたあらゆることに興味を抱きます。知人のコメントの中に、ペトルチアーニは少しずつ死を導き入れながら生きていた、という趣旨の言葉がありますが、作品の中のペトルチアーニの人物像は正にこの言葉に集約されていると言えます。生き急いだという言い方もできるでしょう。

 とにかく素晴らしい人間的魅力と天才的な才能を持ったペトルチアーニの魅力が余すところなく伝わってくる作品です。

 ちなみに、ペトルチアーニのCDは2枚持っています。初期の作品と、もう一つは父親と共演した作品です。どちらも大変素晴らしい作品ですので、是非聴いてみてください。

Michel Petrucciani

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