- 作者: ジェフリーアーチャー,Jeffrey Archer,永井淳
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/05/28
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自動車修理工場に勤めるダニーは、工場の経営者の娘ベスにしたプロポーズが受け容れられ、ベスの兄バーニーを交えて3人で祝賀会をしていた。その店に居合わせたのが法廷弁護士のクレイグ、人気俳優のダヴェンポート、土地管理コンサルタントのペインの3人のグループだった。この3人組は執拗にベスにちょっかいを出してきたため、ダニーらは店外に出るが、3人組も後を追ってきた。そして、クレイグによってバーニーが殺害されたのだった。
ところが、警察に逮捕されたのはダニーだった。自動車修理工場の跡継ぎを巡ってバーニーを殺害したという濡れ衣を着せられてしまったのだ。裁判では若手弁護士のレゴメインが弁護に当たったが、ダニーは刑務所に入れられることになる。
ダニーと刑務所の同房となったのは、ニック・モンクリーフという貴族の若者と、巨漢のビッグ・アルだった。ニックは兵役の際に部下の行為の責任を取らされて入獄していたのだった。ダニーはニックから教わりながら教養を身につけていく。ニックはダニーに対して信頼を寄せ、遺書の中で自らの相続人をダニーとしていた。ダニーの再審の請求は認められず、残り20年は刑務所にいることが決まった矢先、ニックの出所が認められた。ところが、ニックは自殺と見せかけて刑務所の中で殺害される。ところが、ニックとダニーは容姿が似ていたため、ビッグ・アルのサジェスチョンにより、自殺したのはダニーということにして、ダニーはニックとして出所した。
出所したダニーは、ニックに成り代わって、弁護士のマンローの助けを得ながら財産管理を遂行する。亡くなったニックの祖父は財産をニックに相続していたのだが、叔父が遺言書を偽造して財産を詐取しようとしていたため、ダニーはニックに成り代わって財産を守った。そして、ダニーの復讐が始まる。ロンドン・オリンピックの候補地として値上がりが期待された土地を巡ってペインらを騙し、多額の投資をさせた上で、密かにその土地にイタドリ(注:イタドリが繁茂する土地は建物に打撃を与えるので使い物にならないという設定)を植えて、巧妙に候補地からはずさせて、大損害を被らせたのだった。その際、ダニー自らも投資することでペインらを信用させつつ、土地の所有者もダニーだったために、結果的にダニーは儲けるという巧妙な企てであった。ダヴェンポートも自らの家を担保に入れていたために財産を失った。
ダニーはベスに会いたい気持ちを抑えていたが、ベスがニックを訪ねてきたとき、正体をばらし、再会を果たした。しかし、クレイグはニックとして振る舞っている人物が実はダニーであることに気付いた。そして、殺人事件の際にダニーが負った傷の写真を撮り、それを警察に提供し、警察はダニーを逮捕し、再び刑務所送りにする。
ダニーには、脱獄や詐欺等数多くの罪状が問われた。裁判では再び弁護士のレドメインが登場する。レドメインの父親マシューは敏腕の弁護士であり、検察側の勅撰弁護士のピアスンとは永遠のライバルだった。レドメインは雪辱を期して裁判に臨んだが、形勢は不利と思われた。しかしながら、ニックがダニーに対して遺産を譲渡する遺書の存在により、詐欺罪は回避された。そして、クレイグを証人として出廷させ、ダニーの左腿の傷の存在をなぜ知っていたのかを問いつめ、それがクレイグ自らがダニーに刺してできた傷であることを明らかにすることで、ダニーの殺人罪の無実を立証したのだった。
3人は殺人罪に問われ裁判にかけられたが、クレイグとペインは無罪を主張する。ただ、ダヴェンポートは有罪を認めた。。。
最後にダニーの無実が証明されたシーンでは思わずこみ上げるものがありました。ダニーは殺人罪を認めれば2年程度で刑務所から出られるという取引を持ちかけられたものの、それを拒否します。そして再審の請求も認められないことが分かったときには絶望感に包まれますが、刑務所内でニックという信頼できる人物との出会いがあり、ニックの遺志を継いで真摯に行動する中で打開策が開かれていき、最後は濡れ衣を着せた3人に復讐することができたのです。その結末に至るまでの展開は実に見事です。
また、この小説の中で雪辱を果たしたのは、ダニーだけではありません。弁護士レドメインの父親のマシューも、最後の最後で法廷に立ち、長年のライバルとの闘いに勝利し、見事に雪辱を果たすことになります。
周知の通り、アーチャーは実際に刑務所生活を送った経験があり、その中での経験に基づいて短篇集『プリズン・ストーリー』を書いています。
http://d.hatena.ne.jp/loisil-space/20110502/p1
この『誇りと復讐』の中でも、親族の葬式に出席する場面など、実際の刑務所生活の中での体験が反映されているようです。
“復讐”心という行為は人間の本性の中でも重要な位置を占めているように思いますが、その深遠なテーマを説得力ある形で見事に小説化したのが本作品です。大変感慨深い作品でした。