- 出版社/メーカー: IVC,Ltd.(VC)(D)
- 発売日: 2009/04/24
- メディア: DVD
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この作品は製作された時代背景を踏まえずには鑑賞することができません。1937年といえば、日独伊防共協定が締結された年で、その前年には日独防共協定が締結されています。この時期、日本とドイツが急速に近づいていったわけです。そんな中、日本の伊丹万作とドイツのアーノルド・ファンクの両監督による共同映画制作が企てられます。途中で両監督の仲違いがあったため、この作品は各監督による2つのバージョンが存在するようです。
さて、この作品はもともとドイツが同盟相手となる日本のイメージアップを狙った作品であるようですので、日本の美が巧みなカメラワークで撮られています。その代わり、日本の美を強引に詰め込んだだめ、地理的な距離感は全く無視された形で日本の名所が登場する構成になっています。
火山に登る光子を輝雄が追いかける場面は、ストーリーとしては訳が分からないものの、緊迫した場面が映像で巧みに表現されています。円谷英二が撮影に参加していることから、特撮的な技法で迫力ある映像となっています。
音楽は山田耕筰。挿入歌の作詞は北原白秋、西條八十というのですから、当時この映画の撮影に日本全体がどれほど力が入っていたかがよく分かります。
そしてこの映画の最大の魅力は初々しい16歳の原節子でしょう。たまたま撮影の見学に来ていた原節子がアーノルド・ファンクの目にとまり、抜擢されたとのこと。そのクールな美しさは、現代の日本のクール・ビューティーな女性像を早くも体現されていたように思います。戦後『青い山脈』で戦後民主社会を謳歌する清々しい役を演じていますが、戦中から戦後にまたがって正に時代に翻弄された女優といえるかもしれません。
映画ファンなら一度は見ておく価値のある作品でしょう。