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映画、書評、ジャズなど

リチャード・フロリダ「グレート・リセット」

グレート・リセット―新しい経済と社会は大不況から生まれる

グレート・リセット―新しい経済と社会は大不況から生まれる

 『クリエイティブ資本論』など数々の著作の中で、クリエイティビティの果たす役割の重要性が高まっていることを指摘してきた著者による著作です。

 19世紀後半の第1次リセット、20世紀前半の大恐慌を契機とする第2次リセットに続き、金融危機以降の時代を第3次リセットと位置付け、大きなシステムの改変が必要だとする著者の説明は、大変説得力があります。

 著者は、19世紀後半の第1次リセットは、生産工程そのものを抜本的に変え、電力、交通機関、学校教育など新しいインフラが生まれ、一連の繁栄と成長の素地が築かれたと指摘します。今では当たり前となっている住む場所と働く場所の分離もこの当時に生まれたものです。人々がますます大都市に流れ込んだのもこの時期です。

 大恐慌後の第2次リセットの時代は、郊外移転が加速され、個人の夢を郊外で実現しようという時代です。ハイウェイも整備され、持ち家住宅の整備も加速されます。

 ところが、こうして第2次リセットの時代に整備されたシステムは次第に限界を迎え、金融危機で限界が露呈することになります。そして、第3次リセットが進行しつつあるというのが著者の説明です。この時代にあっては、クリエイティビティが重視されるようになりつつあります。車よりも歩くことが好まれ、メガ地域をつなぐ高速鉄道の整備が求められています。持ち家よりも借家が好まれ、人々の移動のフレキシビリティが高められます。

 こうした第3次リセットを一言で言い表せば、「工業経済」から「クリエイティブ経済」への移行ということになるでしょう。著者によれば、リセットには時間がかかり、政府はその原動力ではなく、政府にはこうしたシフトを滑らかにするのを手助けする役割が求められるとします。

 以上が本書の概要を私なりにまとめたものですが、著者の分析には説得力があります。リーマンショックサブプライム・ローンが大きな要因となったわけですが、それは、第2次リセットの時代に郊外の住宅が増え、そこに資金が流れるような金融システムが前提としてあったわけで、そうした第2次リセットの時代に築かれたシステムが限界に達したのが第3次リセットの契機となったと考えれば、分かりやすいでしょう。

 本書で著者が指摘しているクリエイティビティに向かう流れは、これまでの著作でも述べられてきたものですが、そうした主張を「リセット」というキーワードで位置付けているのが本書の特徴です。特に、「リセット」と空間の関係性を、デイヴィッド・ハーヴェイが提唱した「空間的回避」という言葉で説明する点が斬新です。

 期待に違わず、大変スリリングな内容でした。

(参考)
2008-04-11 - loisir-spaceの日記