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「裏切りのサーカス」★★★★

http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD20647/index.html
 以前このブログで『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』を紹介したことがありますが、その映画版である『裏切りのサーカス』を鑑賞してきました。

ジョン・ル・カレ「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」 - loisir-spaceの日記

 ストーリーはだいぶ原作に忠実ですので、以前の上記記事を参照していただきたいのですが、非常に緻密でストーリーが良く練られた作品です。ただ、以前の記事でも書いたように、1回読んだだけでは細部の描写に隠された意図が理解できない作品でもあります。言い換えれば、読み返せば読み返すほど新たな発見がある作品なのです。

 したがって、本を読まずにいきなり映画をご覧になられた方は、もしかすると、登場人物の把握やストーリー展開について行けないケースもあったのではないかと推測します。

 私は、本のストーリーを把握していたため、大変楽しむことができました。登場人物の緻密な描写も非常に良く再現されていました。

 特に、この作品でポイントとなるのは、ジム・ブリドーとビル・ヘイドンとの関係です。2人の関係は単なる友情を超えたもので、おそらくは同性愛的なものです。ジム・ブリドーはスパイと接触するために欺かれてハンガリーに派遣され、そこで暗殺されかけます。瀕死の重傷を負ったジム・ブリドーは、その後帰国して、学校の教師として姿を隠していたのですが、やがて、自分をはめた人物の一人にビル・ヘイドンがいたことを知ります。ジム・ブリドーはハンガリーに旅立つ前にビル・ヘイドンにわざわざ挨拶に行っているにもかかわらず、はめられたわけです。

 映画の最後で、ジム・ブリドーはビル・ヘイドンを射殺しますが、銃撃後のジム・ブリドーの頬には一筋の涙が流れます。その涙の背景には、深い愛情が裏打ちされているのです。バックには名曲♪La Merが流れているのですが、このシーンはとても深い余韻を残す名場面です。 小説と並んで味わい深い作品です。

 小説も新訳が出ていますので、こちらも注目です。

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)