読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる
映画、書評、ジャズなど

「バリー・リンドン」★★★★☆

バリーリンドン [DVD]

バリーリンドン [DVD]

 スタイン・キューブリック監督の1972年制作の作品です。アイルランドの平民が立身出世を果たしていくのを淡々と描いた耽美的な作品です。哀しさと美しさが同居した芸術的な作品です。

 アイルランドの平民レイモンド・バリー(ライアン・オニール)は、従姉妹のノラの誘惑を受けて恋心を抱くが、ノラは金持ちの大尉と恋に落ちる。バリーはノラをあきらめきれず、大尉との決闘を挑む。決闘ではバリーの弾丸が大尉に命中し(実際は麻弾だったため大尉は命を落とさず、後にノラと結婚することをバリーは知る。)、バリーは村を追われるようにして抜け出す。

 バリーは旅の途中で追いはぎに財産を強奪され、英国軍に入隊する。そこでかつての友人に再会を果たしたが、その友人は戦闘で命を落とす。その後バリーは、将校の服を盗んで脱走し、プロシア軍に合流するが、身分を偽っていたことがばれ、プロシア軍の一兵卒となる。バリーは軍の中で頭角を現し、警察のスパイとして抜擢される。スパイの対象はアイルランド出身の賭博師だったが、バリーは同郷のこの男に身分を偽ることができず、身分を明かしてしまう。そして、この賭博師が国外退去する際にバリーも随行し、共に賭博師として放浪する。

 放浪の中でバリーは高貴な婦人レディ・リンドンに出会う。彼女の旦那は病弱でまもなく亡くなり、バリーはレディ・リンドンと晴れて結婚し、高貴な人々の仲間入りをする。

 レディ・リンドンには前夫との間に一人の息子ブリンドンがいたが、彼はバリーを敵視した。バリーとレディ・リンドンとの間にも一人の息子ブライアンが生まれた。

 バリーは母親を邸宅に呼び寄せる。母親は財産がブリンドンの下に行ってしまわないよう、バリーに貴族の称号を取得するよう促す。バリーは貴族となるべく、多額の財産の消費を始め、借金は積み重なっていく。ブリンドンとの関係もますます悪化し、ある演奏会でついに2人は大げんかする。

 しかもその後、ブライアンが落馬で命を落とし、レディ・リンドンも自殺を図るなど廃人のようになる。バリーの母親もますます邸宅の中で傲慢になっていく。ブリンドンはついにバリーとの決闘を申し出る。

 決闘で最初に拳銃を撃つブリンドンは手元が狂い弾をはずしてしまう。後発のバリーはあえて弾をはずしたが、その後ブリンドンが撃った弾がバリーの足に当たり、バリーは片足の切断を余儀なくされる。

 決闘に勝ったブリンドンはバリーに対し、イングランドを出て行くことを条件に終身の年金を払うことを提案し、バリーはこれを受け入れた。母親と共にアイルランドに戻ったバリーのその後は誰も知るところとならなかった。。。


 3時間にも及び淡々と進んでいく長編作品ですが、次々と繰り出される波瀾万丈の展開に決して退屈する瞬間がありません。映像も極めて美しく、ヨーロッパのやや憂鬱がかった壮大な光景が芸術的に描かれています。音楽も美しく用いられており、映画でしか描けない美しさが存分に堪能できる作品です。

 バリーの異常なまでの執着心、ブリンドンとの仁義なき葛藤等々、登場人物の持つ強烈な個性と映像美とがどこか奇妙にマッチして、独特の世界観を醸し出しています。

 キューブリック監督の中では明らかに見やすい作品といえるでしょう。