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「インドへの道」★★★★☆

 場面は英国統治下のインド。英国の娘アデラ・ケステッド(ジュディ・デイヴィス)はフィアンセが判事を務めているインドを、義母のモア夫人(ペギー・アシュクロフト)と共に訪れた。

 そこは英国人がインド人よりも優位に立つ世界であり、両者の接点は少なかった。モア夫人は現地の人たちとの接触を求め、英国人教授のフィールディングの紹介で医師のアジズ(ヴィクター・バナルジー)と知り合う。

 やがて、アデラとモア夫人、フィールディング、アジズらは郊外のマラバー洞窟へ赴いた。この洞窟の中はこだまが響くこと以外には何もなかった。1個目の洞窟の中でモア夫人は気が滅入り、それ以降の洞窟はアデラとアジズの2人に召使いが付いて向かった。しかし、そこでアデラは激しく動揺して洞窟を飛び出し、大けがを負う。しかも、アジズがアデラに乱暴したという嫌疑がかけられ、アジズは逮捕され裁判で争うこととなった。

 現地の人々はアジズの無罪を訴え、反英感情が高まった。裁判の当日、アジズに好意的なモア夫人は息子の薦めで既にインドを離れていた。証言に立ったアデラは当日のことは覚えていないと証言し、アジズへの告訴を取り下げたことから、アジズは釈放される。

 モア夫人は英国への帰国途上で亡くなり、アジズは余生を静かに過ごしていた。フィールディングは、モア夫人の娘と結婚し、アジズのところへ赴く。アデラに対する恨みを抱いていたアジズも、ようやくアデラを許す心境に至り、アデラに手紙を書きその勇気に謝意を伝えたのだった。。。


 この作品では、モア夫人役のペギー・アシュクロフトがアカデミー賞助演女優賞を獲得していますが、やはりモア夫人の魅力溢れるキャラクターとペギー・アシュクロフトの演技が圧倒的に光っています。英国人でありながら、現地人に対して温かい眼差しを向けているモア夫人は、現地で英国人判事として働く息子との関係もぎくしゃくしていきます。しかも、フィアンセであるアデラを自分の息子よりもむしろアジズと近づけるかのような態度を取るなど、その芯の通った強い女性像は大変惹かれます。アジズとモア夫人との間のしっかりとした友情がこの作品の柱にあるように思います。

 また、アデラとアジズの間に起こったトラブルも、支配する側とされる側との間の微妙な愛情関係が引き起こしたものと言えます。2人の間にはうっすらとした愛情関係が芽生えつつあったのですが、それが逆に大きなトラブルとなって噴出してしまったと言えます。この辺の微妙な描写がこの作品では実にうまく描かれています。

 デイビッド・リーン監督のこういう類の映像は本当に美しいという言葉がぴったりです。インドの町中の混沌とした雰囲気もさることながら、マラバー洞窟の映像も本当によく撮れています。

 デイビッド・リーン監督の遺作であり、必見の作品です。