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映画、書評、ジャズなど

「グッドナイト&グッドラック」★★★★

映画

グッドナイト&グッドラック 通常版 [DVD]

グッドナイト&グッドラック 通常版 [DVD]

 ジョージ・クルーニー監督の社会派映画です。マッカーシー議員による赤狩りの時代の異常さと、それに立ち向かうマスメディアを取り上げた作品です。節目節目で登場するダイアン・リーヴスらの歌声と演奏が映画の雰囲気を基底しており、洗練された空気を醸し出しています。

 時代は上院議員のマッカーシー共産党による恐怖を煽り立て、証拠もないままに糾弾していた時代。疑われた者の肩を持つと自分までが糾弾されるリスクがあるため、誰もが公然と異議を唱えられない社会状況。CBSニュースキャスターのエド・マローとそのスタッフらはそんな風潮に毅然として立ち向かう。父親と姉が共産党関係者だとされた空軍兵士が不当に解雇される事件を番組で取り上げ、その兵士はその後軍隊に復帰する。

 マローはマッカーシーの過去の発言を番組で全面的に取り上げ、マッカーシーのやり方に異議を唱えた。マッカーシーは反論の場でマローを共産党関係者だと決めつけて糾弾するが、マローらは一歩もひるまず、世論もマローらの姿勢を支持した。マッカーシーはその後嫌疑をかけられ、マローらは戦いに勝利を収めたのだった。。。


 監督を務めるジョージ・クルーニーの役柄が渋くかっこいいことに加え、随所に登場するダイアン・リーヴスの音楽が非常に効果的に使われており、作品全体が渋くスタイリッシュにまとまっています。

 作品からは、この頃の赤狩りの異常さが伝わってくるとともに、大衆煽動の怖さを痛感します。デマゴーグのリスクは民主主義においては少なからず存在し続ける宿命にあるように思います。カリスマ指導者らによって、一旦、一定の方向に議論が進んでいってしまうと、大衆そしてマスメディアはごっそりそちらの方向に向いてしまい、それに異議を唱えることさえ許されなくなってしまう風潮が生じてしまう事態は、今日の民主社会でも十分起こりえます。

 数年前の小泉政権も、これに似た風潮があったように思います。新古典派的な考え方に異議を唱えようとすれば即「抵抗勢力」というレッテルを貼られてしまったような時代でした。郵政解散時にも、郵政民営化に少しでも異議を唱えれば、マスメディアによって旧態依然の人物という否定的なレッテルが貼られてしまったわけです。

 アメリカ社会においても、イラク戦争に疑念を呈するものなら、マスメディアから非国民という視線を投げかけられた時期がありました。この映画作品が公開されたのが2005年ですから、イラク戦争に対してようやく冷静な視線が現れ始めた時期だったでしょうか。そういう意味では、ちょうどグッドタイミングな作品と言えます。

 民主主義の成熟には、マスメディアの成熟が不可欠だということを改めて感じた作品でした。