- 作者: ジェフリーアーチャー,Jeffrey Archer,永井淳
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1977/09/01
- メディア: 文庫
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ハーヴェイ・メトカーフはいかがわしい株取引を通じて一代で莫大な財産を築き上げた億万長者。あるとき、イギリス政府が北海油田の生産認可を募っているのを見つけ、プロスペクタ・オイルという会社を設立した。そして、デイヴィッド・ケスラーという青年を騙して会社に採用し、ケスラーの口コミを通じて実態のない試掘成功の見通しを広く流布させるとともに、ハーヴェイは自分の株を少しずつ市場に流し、高値で売却していた。ハーヴェイとケスラーは面識すらなかったため、ハーヴェイの罪を問うことは警察にとっても難しかった。
ケスラーの口コミを通じて、プロスペクタ・オイル社の株を掴まされ大損したのが、オックスフォード大学の客員フェローのスティーヴン・ブラッドリー、上流階級専門の医師であるロビン・オークリー、フランス人の画廊経営者ジャン=ピエール・ラマン、そしてイギリス人の貴公子ジェイムズ・ブリスグリーの4人であった。スティーヴンは3人に呼びかけて、各人が1つずつ計画を持ち寄ってハーヴェイから百万ドルを取り返す計画を立てる。
4人は、ニセのゴッホの作品をハーヴェイに掴ませて多額の金を手にする。それから、カジノにいるハーヴェイに薬品を飲ませて、ロビン扮する著名な医者が胆石を取り除く手術をしたと見せかけ、多額の治療費を請求する。さらに、スティーヴンがノーベル賞受賞学者に扮して、ハーヴェイに名誉学位を与える見返りに多額の寄付を行わせる。
最後にジェイムズだけが計画を練りあぐねていた。彼はちょうど恋人のアン・サマートンと良い関係になりつつあり、やがて2人は結婚する段取りとなった。ジェイムズはアンに一連の計画について漏らしていたが、アンの父親と会って驚いた。アンの父親はハーヴェイだったのだ。ハーヴェイはジェイムズらが自分の金を奪う計画を進めていることはアンから何も知らされてなかった。
ジェイムズとアンの結婚式には、スティーヴンらも招かれた。アンは父親から結婚祝いとして多額の小切手を受け取り、それをジェイムズらに渡した。これで4人の計画は見事達成され、百万ドルの奪還は完了した。
ところが、プロスペクタ・オイルの持つ鉱区のすぐ側から大規模な油田が発見され、同社の株価は急騰する。4人は今度は、奪った金をどうやって返すかを考えなくてはならなかった・・・。
この作品の面白さは、物語の設定にあると思います。株を掴まされて大損したものの、真の首謀者の罪は問えそうもない。だから、4人はそれぞれ計画を立ててハーヴェイから取り返さなくてはならない。しかも、どの計画もハーヴェイは金を奪われたと気付かないように、巧妙に練られています。とてもスリリングでユーモアたっぷりな展開は、最高のエンターテイメントとなっています。
特に後半のテンポ良い展開は小気味よさを感じます。また、ヨーロッパの上流社会のエスタブリッシュな世界が垣間見られるのが、興味をそそられます。
ジェフェリー・アーチャーにはこれからはまりそうです。