読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる
映画、書評、ジャズなど

「ヒア アフター」★★★★☆

映画

http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD17605/index.html
 クリント・イーストウッド監督の最新作です。死というテーマについてそれぞれの立場から熟考する3人がやがて運命的に結びついていくという作品です。

 パリのジャーナリストのマリーは、不倫相手とのバカンスで大規模な津波に遭遇し、水中で一時意識を失い生死をさまよう経験をする。その後息を吹き返し、自らの看板番組にも復帰するが、津波の体験以降何かが変わってしまい番組を休養。政治本の執筆をしようとしたものの、結局書きあげたのは、来世(ヒア アフター)についての本だった。しかし、フランスでは本の出版をしてもらえず、番組への復帰も叶わなくなり、結局、イギリスでの出版が決まったことから、ロンドンのブックフェアに出展することになる。

 サンフランシスコでかつて霊能者をしていたジョージ(マット・デイモン)は、幼少の頃に生死をさまよう病気を患ったことが原因で、霊能力が身に付き、相手の手を触ると、相手に取り憑いている霊の声を聞くことができたのだった。しかし、自分の霊能力に耐えられなくなり、普通の工場で勤務をするようになる。料理教室で出会った女性と親密になりかけるが、霊媒の依頼に応じたことから、結局恋は実らず、ジョージは失意のどん底に陥る。その後、兄に促されて再び霊能者に戻ることになるが、その直前にロンドンに脱出。大好きなディケンズの足跡を求めてロンドンに向かう。そこでディケンズの朗読会のポスターを目にし、それが行われるロンドンのブックフェアに向かった。

 ロンドンの双子の弟のマーカスは、母親が薬物中毒だった。ある日、兄のジェイソンが母親の薬を取りに行った帰りに交通事故で死亡する。母親が麻薬治療に専念するため、マーカスは里親に引き取られる。マーカスは兄との対話を求めて霊能者を訪ね歩く。ある日里親に連れられて、前の里子で今警備員をやっている少年に会いにいくためにロンドンのブックフェアを訪れる。そこで、かつてインターネットで見たジョージの姿を見つけ、霊媒を依頼するが、ジョージはもう霊媒はやらないと断る。執拗に付きまとうマーカスに根負けして、ジョージはマーカスの霊媒をする。死後の世界にいる兄の声を聞き、マーカスは心機一転することができた。

 ジョージはロンドンのブックフェアで出会ったマリーに惹かれ、サイン本をもらう。その後マリーの居場所がつかめなくなるが、マーカスに居場所を教えてもらい、ジョージはマリーをオープン・カフェに誘う。ジョージはマリーの手を握るが、もはや相手の霊は見えず、ジョージはようやく霊能力から解放されたのだった。。。


 ロンドン、パリ、サンフランシスコを股にかける壮大な設定と、それが最後にはロンドンに収斂していき、ハッピーエンドで終わる。映画を知り尽くすクリント・イーストウッド監督だからこそなせる技です。作品の全体構成は非の打ち所がありません。

 前々作の『グラン・トリノ』もイーストウッド監督の死に際の美学が現れた作品でしたが、この作品では「死」というテーマをもっとストレートに取り上げています。既に晩年に入っているイーストウッド監督は、やはり「死」について考える時間も増えているのかもしれません。

 しかし、この作品では、最後は3人とも「死」を乗り越えて、新たな人生を踏み出していきます。このハッピーエンドが、観客に対するイーストウッド監督のエンターテイメント精神の現れてと言えるでしょう。

 さすがイーストウッド監督!といった感じの作品です。