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映画、書評、ジャズなど

「モンガに散る」★★★★★

http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD17195/index.html
http://www.monga-chiru.com/

 今年最初に映画館で鑑賞した作品です。期待以上に素晴らしい作品で、早くも今年最高の作品に出会ったか?という気分にさせられた作品です。

 舞台は台北の歓楽街・モンガ。地元の高校に転入してきた通称モスキート(マク・チャオ)は、クラスのいじめから助けてくれたことをきっかけに、モンガを縄張りとする廟口(ヨウカウ)組の一員となり、極道の道に足を踏み入れる。

 廟口組は、切れ者のモンク(イーサン・ルアン)、ボスである通称ゲタ親分の息子である通称ドラゴンら5人の若者がグループを形成し、縄張りを仕切っていた。5人は義兄弟として血の結束を誓い合う。

 しかし、モンガには大陸からの集団が入り込もうとしていた。モンクは自分の親がゲタ親分に虐げられたことを知ったこともあり、ライバル集団と組んで、ゲタ親分を殺害する。そして、廟口組の仲間を裏切り、大陸の集団と手を組もうとしていた。

 モスキートはモンクの行動を不審に思い、真実を問いただそうとしたため、ライバル集団との間で抗争が勃発する。両集団が入り乱れ、モンクとモスキートは極道の論理で傷つけ合ったのだった。。。


 一見シンプルなストーリーに見えるかもしれませんが、この作品の中では、様々な人間関係が交錯しており、それが登場人物の行動心理に重大な影響を与えています。モンクはボスの息子であるドラゴンを立て続け、仲間の失敗を一身にかぶってボスからしごきを受けます。そうした理不尽な状況に加え、自分の父親がボスから排除されたことを偶然知ることとなり、しかもライバル集団に対する負い目があったことも加わって、義兄弟を裏切る行動に出ることになります。しかし、最後、両集団が入り乱れる中で、モンクは義兄弟を攻撃するのではなく、通謀していたライバルの耳を切り落とす行動に出ます。義兄弟たちを裏切る中で、義兄弟に対する同志愛が残っていたわけです。

 モンクを演じたイーサン・ルアンは台湾金馬賞(アカデミー賞主演男優賞を受賞したそうですが、この作品の中でも、モンクの心情心理が最も重要な鍵を握っており、心理的葛藤が伴う難しい役柄を実にうまく演じています。

 モスキートの母親も、大陸から台北に入り込むことを目論む男と昔付き合っており、その男から送られた日本の桜が描かれた一枚の葉書を眺めながら、モスキートはいつか日本に行ってみたいという希望を胸に抱き続けてきました。
 最後のシーンでは、モンクから飛び散る血しぶきが桜の花びらのイメージに重ねられ、モスキートがプラトニックに愛した娼婦のイメージとも重ねられるなど、日本の桜のモチーフが効果的に全編を貫いています。

 こういう風に人間心理を巧みに組み込んだ映画作品というのは、やはりハリウッド映画にはない魅力です。台湾映画の高い将来性を見せつけられた気分です。

 141分があっという間に過ぎてしまった、大変素晴らしい作品です。こういう作品が東京でもシネマート六本木などごくわずかな映画館でしか上映されていないことが不思議でなりません。