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映画、書評、ジャズなど

「道」★★★★☆

道 [DVD]

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 フェデリコ・フェリーニ監督の名作です。人間の心理描写が実に巧妙に描かれています。

 大道芸人のザンパノは、貧しい一家から知能の低い娘ジェルソミーナを買い取り、旅に同行させる。ザンパノは鉄の鎖を胸の筋肉でぶち切る芸を披露しながら各地を転々と旅している。ジェルソミーナは浮気を繰り返すザンパノに嫌気がさすものの、辛抱強くザンパノに付いていく。
 ある日、合流したサーカスのメンバーの1人の青年がザンパノをからかったことから、2人は喧嘩となり、ザンパノは警察に勾留されてしまう。ジェルソミーナは周囲からザンパノの下を離れることを勧められるが、ジェルソミーナはザンパノの下に残ることを決意する。
 再び旅回りを始めた2人であるが、喧嘩した青年と再び鉢合わせてしまい、ザンパノはその青年を殺害してしまう。
 ジェルソミーナは動揺し、まともに芸をできなくなってしまう。そして、ザンパノは寒さの中で寝ているジェルソミーナを置きざりにして行ってしまう。
 1人になったザンパノは街でジェルソミーナがラッパで奏でていた曲を耳にする。ザンパノは酒場で酔いつぶれてつまみ出され、そのまま海辺で泣き崩れた。。。


 フェリーニ監督の人間心理描写の巧妙さが際立っています。
 当初冷酷極まりないザンパノでしたが、けなげに辛抱強く自分に付いてきたジェルソミーナを見捨てたことについては、後悔の念を隠せず、そこに人間性のかけらがようやく顔を出します。その過程が実に違和感なく表現されています。

 絶望するジェルソミーナに対して、ザンパノと喧嘩した青年がかけた言葉が印象的です。どんなものでも役立っているのだ、という趣旨の言葉です。その辺に落ちている石でさえ役に立っているのだと。この言葉にジェルソミーナは勇気づけられます。

 フェリーニ監督の作品は、絶望の中にも明るさや希望があるところが、見ていて大変清々しい気持ちになります。どことなく『カビリアの夜』を連想させるこの作品でも、フェリーニは人間性に対して決してあきらめていません。

 そういう意味で、この映画は人間賛歌とも呼ぶべき作品です。