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「Ray/レイ」★★★★

Ray / レイ [DVD]

Ray / レイ [DVD]

 レイ・チャールズの生涯を描いた作品で、本人もその製作に深く関与しながら、映画の完成前に亡くなってしまったという作品です。主役を演じたジェイミー・フォックスの演技力が圧倒的に光る作品です。

 本作品は、幼少の頃の回想が随所に織り込まれながら展開していきます。レイの弟が不慮の事故で亡くなってしまい、その後レイは緑内障失明してしまいます。母親はレイに対し、盲目と言われずに独り立ちすることを切に願いながらレイを育てていきます。

 やがてレイは音楽の道を進んでいき、成功を収めますが、薬物にも手を出すようになります。結婚して子どもを授かるものの、ツアー先では数々の女性と浮気します。

 ただ、レイは自分のルーツを常に見失いません。幼少の頃の回想が随所に登場するのは、そのことの証左でしょう。最後の方のシーンでは、空想の中で母親との再会を果たし泣き崩れますが、母親の影響力の強さを象徴するシーンです。

 そして、人種差別とも闘い、人種隔離施設での公演を拒否したことから、ジョージア州から追放されますが、後年、ジョージア州議会はその判断を誤りと認めた上で、レイの演奏したホーギー・カーマイケルの“Georgia on my mind”を州歌と定めます。


 日本ではどうしても“Ellie My Love”の印象が強いのですが、アメリカのジャズ・ポップス・シーンに欠かせない人物であり、その成功の影には様々な葛藤やトラウマがあったことがよく現れている良作でした。