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「海の上のピアニスト」★★★☆

海の上のピアニスト [DVD]

海の上のピアニスト [DVD]

 あの『ニュー・シネマ・パラダイス』のアレッサンドロ・バリッコ監督による1999年の作品です。客船の上で生まれ、地上に足を踏み入れることなく生涯を終えるピアニストを描いた作品です。

 移民をアメリカに運ぶ客船ヴァージニアン号で石炭をくべているダニーは、ある日客船の中に赤ん坊が置かれているのを見つけ、1900と名づけた。1900はそれ以降、客船の中で育ったため、地上の世界を見たことがなかった。

 1900はピアノでダンス音楽を上手に奏で、やがてその名声が広がっていく。ジャズの創始者と豪語したジェリー・ロール・モートンも1900に挑戦しにやってくるが、敗れて去っていく。

 やがて老朽化したヴァージニアン号はダイナマイトで爆破されることとなる。1900と長年共演してきたトランペッターのマックスは、1900がヴァージニアン号の中に残っていると確信し、船内を探し回る。かつて1900が録音した演奏によって1900を探し出す。マックスの説得にもかかわらず1900は船内に残ることを選ぶ。

 ヴァージニアン号は海上で爆破された。。。


 この作品が取り上げているテーマは大変共感できますし、ジェリー・ロール・モートンが出てくるなどジャズファンとしてはたまらない作品であることには違いないのですが、細部において違和感を感じるシーンが多々あるところが残念です。

 例えば、1900とジェリー・ロール・モートンとの対決の場面で、1900が勝利するシーンの演奏ですが、正直ちっとも良い演奏に聞こえないので、なぜ1900が圧倒的に勝利したかについて説得力がないのです。

 また、船から一度も出たことがない1900があまりにスマート過ぎます。特に、最後1900が船内に残るシーンでも、1900が異様にこぎれいな恰好でいるのは、正直違和感を感じてしまいます。何日も一人で船内に閉じこもっていたのですから、ある程度汚れていて当然でしょう。

 さらに、マックスが船内で1900を探すシーン。わざわざレコードを持ち出してこなくても、マックスがトランペットで同じ曲を吹いて回ればよかったのではないか。このレコードが1900を探し出す上でこれほど重要な位置づけを占めているのには、やはり違和感を感じざるを得ません。


 テーマが良いだけに何とも惜しい作品でした。。。