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「俳句甲子園」が面白い!

 松山市では毎年、各地から高校生が集まって「俳句甲子園」が開催されています。
http://www.haikukoushien.com/
 与えられたテーマで各チームが俳句を作成し、それぞれの俳句について、互いに討論を行い、最終的に審査員が勝敗を判定します。初日の予選は松山市中心部の商店街で開催され、2日目の決勝戦は松山市のホールで開催されます。

 私は2日目の決勝戦を少し見てきたのですが、これが知性溢れた立派なエンターテイメントになっているのです。

 今年は東京の開成高校の2チームが準決勝で対戦するという展開。Aチームが高校3年生のチーム、Bチームがその後輩に当たるという異色の対戦だったわけですが、先輩・後輩関係なく互いの俳句を真剣に論評し合っていました。決勝戦は5人のチームが順々に俳句を激突させる5本勝負で、最初に3勝した方が勝ちというルールです。「黒」というお題が与えられ、それぞれが「黒」を入れた俳句を作るのですが、やはり面白いのはディベートの部分です。

 高校生とは思えない博識な教養に基づき、互いの俳句を論評するとともに、相手の質問に対して丁寧に答えていきます。最初から自らの句を解説するのではなく、相手の質問に答える形で解説するというところが面白い点です。

 この先輩・後輩の勝負は結局年の功ということで先輩チームが勝利したのですが、後輩チームは真剣に悔しがって泣いています。それほど真剣勝負をしていたということでしょう。最後は後輩チームから先輩チームの力量を称える言葉があり、清々しい空気が流れました。

 決勝は沖縄の首里高校との対戦です。「白」がお題として与えられます。互いに一歩も譲らない対戦が繰り広げられ、3-1で開成高校が優勝したのですが、首里チームが最後に用意していた

白地図に国境引くや沖縄忌」

という句がとても印象的でした。多くの米軍基地を抱えている沖縄にとっては、至るところに国境線が引かれているわけです。そして、戦後は一旦米国の占領下に置かれた後に日本に返還された沖縄は、正に国境線に翻弄されてきた歴史を経てきたと言えるでしょう。沖縄にとっては終戦で戦争が終わったわけではなく、終戦から新たな戦争が始まり、今日に至るまで翻弄され続けてきたと言えるでしょう。

 そんな思いが高校生の手によって短い言葉に表現されているわけで、しかもこれは沖縄の人にしか作れない句です。私はこの句に大いに感銘を受けました。これこそ俳句の力を最大限生かした句といえるのではないでしょうか。

 松山の地で母校の勝利を見られたのが至上の喜びであったことは言うまでもないのですが、首里高校のこの一句をもって首里高校に軍配を上げたい気持ちにさえなってしまいました。

 何も野球だけが高校生の青春の王道ではありません。俳句甲子園を目指して1年間精進を積み重ねてきた生徒たちの青春も素晴らしいものです。テレビも野球の甲子園の映像ばかり垂れ流すのではなく、別の形の多くの高校生の青春に注目してもよいのではないかという気がしました。