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セキ美術館@道後温泉


 道後温泉から徒歩5分の閑静な住宅街の中に「セキ美術館」が佇んでいます。
 おしゃれな一軒家のようなこじんまりとした美術館ながら、大変素晴らしい絵が数多く展示されているキラリと光る美術館です。

 美術館は地上3階地下1階で、1階が日本画、M2階と3階が洋画、2階がロダンの部屋となっています。

 1階には東山魁夷の『静寂』、横山大観の『孔明』『初夏竹林』など素晴らしい絵が並んでいます。1階には19世紀の巨大なオルゴールも設置されており、当時の音が楽しめます。

 2階の奥には加山又造小磯良平の絵が展示されていましたが、この2人の絵がとりわけ光っていました。加山又造の『白い道』は薄暗い森の中の雪道を描いた絵で、暗い空を多数の鳥が舞っているです。『凝』と題された絵は、ペルシャ猫が背後の蝶の気配に気づいてさっと後ろを振り返った姿を描いたものですが、青く光る猫の目と青く光る2匹の蝶がことさら浮き出ており、静寂の中に緊張感が走っている絵です。小磯良平の『少女』と題された絵は、椅子に座る少女のデッサン画ですが、少女の落ち着いてリラックスした表情が何とも印象的です。

 道後温泉と正統的な美術館というのは、一見似つかわしくないようにも思えるのですが、意外と合うものです。道後といえば夏目漱石の『坊ちゃん』色が異様に強いのですが、むしろこうしたアートとの融合という方向性を目指すやり方もあるのではないかという気もします。