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映画、書評、ジャズなど

「アメリカン・ビューティー」★★★★★

アメリカン・ビューティー [DVD]

アメリカン・ビューティー [DVD]

 先進国アメリカにおける閉塞感、病理性をユーモラスに表現した映画で、アカデミー作品賞を受賞した映画です。

 典型的な中流家庭の夫レスター(ケヴィン・スペイシー)と妻キャロリン(アネット・ベニング)。レスターは長年広告会社に勤めてきたが、リストラを宣告され、会社の束縛から解放された喜びに浸る。そして、娘ジェーンの友人アンジェラに強く惹かれ、気を惹くために筋力増強に励むようになる。

 他方、キャロリンもライバル不動産会社の社長と浮気するようになり、家庭内の絆は崩壊する。

 隣家には元海兵隊員の一家が引っ越してきた。その息子はビデオ片手に他人を撮影する怪しげな行動をとっていたが、ジェーンはそんな彼に惹かれる。またレスターも隣家の息子と意気投合してマリファナを譲られる関係となるが、元海兵隊員の父親は2人を同性愛関係だと誤解し、レスターを射殺する。。。


 この作品ではアメリカの美として、ビニール袋が路地を風に舞っている映像が何度が登場します。その殺伐とした美の光景こそが先進文明社会の閉塞感を象徴しているように思えます。
 かつては、郊外の庭付き一戸建てこそがアメリカ人の憧れる豊かなライフスタイルの象徴だったわけですが、その理想像がいかに空虚なものであったか。

 戦後日本社会でもアメリカ社会と同様に郊外の一戸建て指向が強かった時代がありましたが、結局、都心までの長距離の殺人的ラッシュアワーを強いられ、今では郊外ニュータウンは次々と人が抜けていき、殺伐としたゴーストタウンの様相を呈しています。近所づきあいも希薄で、病理的なコミュニティだけが残ってしまったようなニュータウンの光景をあちらこちらで目にします。

 こういうわけで、この作品はアメリカ社会のみならず今日の日本社会における病理的な側面を彷彿とさせるものであり、日本社会に当てはめた場合でも奇妙なリアリティを感じさせられることから、私は大変気に入っている作品です。